ぽいと丸めた原稿用紙を放る
「あと少しで完成なんだがなぁ……」
決め手となるセリフがなかなか浮かんでこない

畳のうえ大の字になってみる
近所のベランダの屋根を
しとしと打つ、やさしい音
そっと瞼を閉じ、泳いでみる

「しばし、このまま」
間抜けに響いたように感じ
フッと吐息が洩れた

じっと見つめる
きらり、きらり
宙を舞う

触れた、あたたかな

あなたの味方よ、と
言われた気がした

そんなカオしても無駄よ

男の背から漂うモノがある
私が弱いと知って、そうするのね

ああ
今すぐこの腕におさめたい
しとしと、ふるえて
感情を溢れさせている

ガタン、

椅子が倒れる音

一番に理解してあげたい
くらい、くらい、くらい
何が見える？

受け止めて
認めて
映しだしてあげよう

ぴかり、ぴかり
まぶしくなくても
愛してあげたい

香る
にごった瞳
最後の瞬間を映して

皮をはぎ
やわらかな羽を伸ばす

はじめまして

言ってごらん
そっと、くちびるで紡ぐ