るった

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12/12/2023, 3:56:29 AM

【 何でもないフリ 】

「アイツさ、『俺イケメン!』とか思ってそうじゃない!?」
「分かるー!顔はいいのはマジだけど、チャラすぎ(笑)」

他愛ない会話に出てくる彼は、僕の親友。
実際は、明るく気遣いのできる、優しい奴だ。
お調子者キャラの側面もあるけれど、根っこは違う。

彼だって、四六時中キャラを演じているわけじゃない。
真面目な面だって、かなりの時間見せている。
親友の欲目じゃなくて、彼という人間を見れば明らかだ。
僕としては、彼に対する誤解が生まれてしまうのが、
この上なく辛い。

「アンタも思わない?」
そう話を向けられて、僕は当然否定した。
「マジメかよ(笑)」
あはは、と場の流れは止めずに一緒に笑っておく。

でも、僕の心は、悔しさと悲しさでいっぱいだ。

12/11/2023, 8:44:35 AM

【 仲間 】

仲間とは何か。
互いを敬い、助け合う存在か?
いや、私にとっては、ただの仕事相手だ。

勇者として身を立てるべく、パーティを組んだ。
各々が自身の得意分野を活かし、共通の敵を倒していく。
だが、それが何だというのだ。
己の身は己で守るのが基本、足りないものは補って。
当たり前の事をするのに感謝など必要か?

ただ、次第に相手の素性や個性を知っていく内に、
いずれパーティが解散したとしても、付き合っていきたい奴らだと思うようになった。

あぁ、これがそうなのか。
敬うとは、こういう思いを言うのか。

それを抱く相手を仲間とは呼ぶのなら、
このパーティはそうなんだろう。
ボスを倒したら、今度はこのメンツで旅に出てみよう。

12/10/2023, 9:13:02 AM

【 手を繋いで 】

幼い日の思い出。
あの人に手を引かれて、その背中を見つめながら帰る。
親の代わりに迎えに来てくれるその人を、尊敬していた。

自営で忙しい親の代わりは、叔父だった。
体を壊したからと、子どもの相手をさせられるのは、
複雑な気持ちだったかもしれない。

とはいえ、親よりも長くいるから、懐くのは当然だ。
どんな遊びにも付き合い、イタズラをしたら叱って。
本当に、親代わりの存在だった。

だから、突然いなくなってしまった虚無感は、計り知れない大きさで襲ってきた。
泣く、という行為すら忘れ、呆然とする。

大人になったら、子供の手を引いてあげよう。
子供心に決意した、ある冬の出来事だった。

12/9/2023, 12:37:23 AM

【 ありがとう、ごめんね 】

君とは、いわゆる幼馴染みで、ほぼクラスも同じで。
日中の大半の時間を、共に過ごしてきた。
お互いに一人っ子で、家族ぐるみの付き合いもあって、
兄弟のように育ったというのは本当だ。

だから、君の考えることなんて、お見通しなんだよ。
卒業したら、今度こそ別の道を歩き始めるけれど、
それを応援したくて、でも寂しくて。
複雑な思いは、ほら、顔に出てる。

この後、きっと言いたいことがあるって呼び止めるね。
「何?」
「ねぇ……好きだよ…」
これも、予想通りの内容だ。
両思いなのは分かっていたけど、自覚した時からそれが
叶わない、叶えるわけにはいかないと気付いていたんだ。
それを、君に知られたくなくて、でもずっと変わらない思いを抱いていてほしいと、利己的な考えを押し付けてしまう。

やり場のない思いは、やはり顔に出る。
困った哀しい笑顔を向けるしか出来ないのを、
どうか許してほしい…。

12/7/2023, 12:56:57 PM

【 部屋の片隅で 】

いつも、決まった場所にいると気付いたのは、
もはやいつのことだったか分からない。
そこから動くこともなく、話すこともない。
ただ、そこに『いる』のだ。

同居人、と言って良いかは微妙だが、お互いの存在は認識できている。
(何でいるんだろう?)
そう思うだけで、相手に干渉しようという気は無い。

この部屋が、いわゆる事故物件というのは承知している。
そんなところに好んで来る者は、変わり者と思われるのも無理はない…と、相手も思ってるのだろう。

さて、取り憑くか、憑かれるか。
どちらが先に音を上げるか、静かな勝負が今日も続く。

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