『澄んだ瞳』
目は前にしかついていない。
見たいものをその瞳に映すために。
向き合うために。目を背けないために。
行き詰まったら別の方を向けばいい。
そこに前も後ろも、右も左もないのだ。
私が見る先に、あなたがいて欲しい。
あなたが見つめる先に、私がいて欲しい。
濁りなく、澱みない私の気持ちよ。
どうか綺麗なままで。美しいままで。
どうか、あなたに、届いて欲しい。
『嵐が来ようとも』
泣くのはやめた。
嵐が来ようとも。
雷が鳴ろうとも。
怒るのもやめた。
散らかっていようとも。
間違っていようとも。
悲しむのもやめた。
足が痺れようとも。
擦り傷が増えようとも。
私は、弱さを忘れない。
不完全な強さでも、
笑って、誇って、生きようと思う。
『お祭り』
ああ、薄暗くなってきた。
ぬるい風と、やってきた。
この夏は、この夜だけは、特別。
聞こえる。
囃子が。風が。足音が。
揺れる。
提灯が。木々が。君の髪が。
触れる。
視線が。手が。心が。
ああ、甘い。甘い。
雲のような、この気持ち。
はぐれないように。どこかへ行かないように。
「手、繋ごう。」
今日は、お祭り。
『神様が舞い降りてきて、こう言った。』
「幸せになってね。」
ああ、神様。
あなた様が、もしまだどこかにいるのなら。
あなた様が、私の、幸せです。
あなた様の存在を知ることが出来た私は、幸せです。
私の幸せは、あなた様です。
私は、十分に。そう充分に、幸せです。
どうか、どうか。祈りよ。届かないでください。
私の願いよ、叶わないでください。
私に、耳を貸さないでください。
私を、見つめないでください。
私に、触れないでください。
あなた様は、私の、幸せでした。
『誰かのためになるならば』
私が“誰か”と笑い合う時、
他の“誰か”は泣いているのだろう。
私が“誰か”と悲しむ時、
他の“誰か”は喜ぶを分かち合うだろう。
私は、どんなことも厭わないぐらいに、
人を愛し生きることができるのか。
誰かのために泣くことができるのだろうか。
誰かのために笑うことができるのだろうか。
私は、あなたのために、
所詮、エゴのために
何かを選び続けなければいけないのか。
誰かのためになるのならば、
私は、
得るために捨てることを、選べるのだろうか。