もしも未来が見えたとしたら
いまこの時がとてもちっぽけで
幸も不幸も全てが予定調和でつまらないと
生きる意味を失うのだろう。
ならば人が前世なんて物の記憶を持たずに生まれるのは
きっと人生を楽しむためなのだ。
何も無いまっさらな君で生まれ
まっすぐに生きて
まっしろに死んでいく。
未来が見えないこと。
それを幸福だと、言える人生にするために
あなたは今も呼吸をしている。
事実を指摘してくれる優しさを、
厳しさだと思い、批判だと耳を閉じ、
そうやって貴女は逃げ続けるだろう。
幸せですか?
貴女を思って口を開いてくれた人を悪人にして
皆に後ろ指を指させて
何も努力しなくて良い貴女の人生は
幸せであるべきです。
幸せでしょう?
誰かを不幸にしてまで勝ち取った被害者面は。
白く輝く月の裏側を踏みしめる事は不可能なのだ。
白く輝くのは我々が遠くから見上げるからであって、
近付き、地に足をつけたらそこにあるのは
灰色の、遮る物が何もない、細やかな土に覆われた球体だけ。
白い月に降り立ちたいと願うような
そんな思いで、毎夜身を焦がす。
眠れないほど。
白い月がまるで沈まぬと錯覚するほど。
命が燃え尽きるまで貴女と出会った事を呪い、
貴女が貴女であった事を憎むでしょう。
命が燃え尽きたらその時は、
地獄の業火で共に焼かれましょう。
そして貴女は生まれ変わって、
子孫を残さず、平凡な幸せを享受して
何者にもなれない人生を平坦に生きてください。
二度と私に出会わない貴女でありますように。
貴女が幸せになれるまで、
私が未来永劫の地獄であり続けなければならないのは
私が優しいからに他ならない。
自分勝手で我儘な貴女に
その優しさがわかることなどないからこそ
貴女は幸せであるべきなのです。
ここは世界の果て。
地獄の底から伸びる手が貴方を叩き潰す最果て。
でも終わりじゃない。
だから地獄なのだと思い知るための場所。
そう、ここはアルカトラズ。
こんな所まで来ないと生を感じられなかった貴方を看取る場所。