『カーテン』
ようやく終演を迎える
私の人生の集大成
スポットライトを浴びるのは
今日で最後
あとは
観客の拍手と歓声に包まれた
カーテンコール
の はずだった
舞台に…
観客は 私を待っている
けれど
足が動かない 目も霞んできた
「ここまでか…」
私は
スタッフの肩を借り
そのまま会場を後にする
無様な姿は見せられない
私の最後のプライド
私らしい幕引き
瞼を閉じ
後部座席に横たわる
私の耳に
鳴り止まない拍手と歓声
いつまでも…いつまでも…
「我が人生に悔いなしね」
大きく深呼吸をひとつ
私は 人生の幕を下ろした
『涙の理由』
なんでもないわ
大丈夫よ
気にしないで行って
涙の理由は聞かないで
誰のせいでもない
自業自得よ
わかっている
だから お願い
これ以上
惨めにさせないで
気づかぬふりして立ち去って
『ココロオドル』
静かだった水面に
大小様々に
波紋が広がっていく
静寂だった森で
大小様々な草木に
雨粒が降りそそぎ
音楽を奏でる
向風の中
荒野にひとり立つ
2本の足で
しっかり大地を踏みしめ
真っ直ぐ
前を見据える
未知なる世界への
旅立ちを前に
ココロオドル?
否
足がすくみ
きびすを返し
逃げ出す準備をしている
戦わずして
白旗を上げようとしている
恐怖で心がざわつき
叫び声を上げる
敗者 負け犬
所詮
底辺の人間なんて
こんなもん
『束の間の休息』
なぜか ふっと
遠くに行ってみたくなった
行き先を決めず 電車に乗る
海が見える知らない町
波の音を聞きながら
ぼんやり眺める
たまには こんな日もいい
束の間の休息
充電完了!
美味しい魚料理でも
食べて家に帰ろう
『力を込めて』
もう 二度と
同じ過ちは犯さない
一人も 残さない
必ず 助ける
動け…動け…動け 心臓!
まだ 終わらすな!諦めるな!
頼む… 戻って来い!
戻って来い!戻って来い!戻って来い!
力を込めて 祈りを込めて
無意識に叫んでいた
微かな反応
瞼がゆっくり動く
息をふきかえした
小さな命
ホッと胸を撫で下ろす
「まだ 終わってないぞ~」
遠くで先輩の声が聞こえる
担架で運ばれて行く
小さな命を横目で見送りながら
助けを求める人のもとに向かう