睦月

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7/30/2023, 11:21:02 AM

『澄んだ瞳』

穢れを知らない澄んだ瞳が
何か責めるように
こちらを見つめる

心臓の鼓動は聞こえない
痩せ細った身体も動かない

いったい いつから
ここに置き去りにされていたのか

わずか
数年 数ヶ月 数週間 数日 数時間
この世に産まれた
記憶も記録さえもないまま

誰にも気づかれず
小さな命の灯火は
静かに終わりを迎えていた

7/29/2023, 10:49:47 AM

『嵐が来ようとも』

冷たい風が ほほをかすめた
遠くで雷鳴が聞こえる

大きく深呼吸をひとつ

そして

彼は 向風をものともせず
威風堂々とした姿で
皆の前に立つ

我が百獣の王である
と言わんばかりのその堂々とした姿に
集まったものたちは
静かにかしづき

新たな時代の始まりを告げる

7/29/2023, 12:46:34 AM

『お祭り』

大嫌いだった
いつも 大勢の人だかり

「はぐれないように」

そう言われて
しっかり握っていたはずなのに

人波にのみ込まれ
いつの間にか

その大きな手が離れて

気づけば

いつも ひとりぼっち

遠くに花火の音を聞きながら

泣いて 走って 家まで帰る

「何で 帰ってくるの」

小さなな声でつぶやく
母親の
怒りと憎悪の視線

また 今年も
この季節

「今年こそは」と思うのです

おかあさん

あなたの望み通り

今年は家には帰りません

あなたが 泣いて頼んでも

最後の その日を向かえるまで

ひとりで生きていてください



7/27/2023, 11:15:04 AM

『神様が舞い降りてきて、こう言った』

「本気で願いを叶えたいなら
ワシを幸せにして」

突然 知らないじいさんが
こう言った

「イヤなこった」
そう言い返すと
じいさんは驚いた顔をした

「何で? ワシ神様じゃよ」

「神様は神様でも 貧乏神だろう。お前なんか絶対に幸せになんかしてやらない」

じいさんは大慌て
それでも気にせず

「お前を幸せにするくらいなら私は私を幸せにする」

じいさん顔面蒼白

「自分を幸せにするのに忙しいからとっとと帰って」

じいさん無言で肩を落として帰って行った

7/24/2023, 12:20:19 PM

『友情』

友情ってなんだ?

食ったら 旨いのか?

腹の足しにならないもんなら

いらねえな

野生で生きてて 必要なのは

食うか食われるかの

弱肉強食の世界を

どう生き残るか

ただ それだけだ

あんたが

オイラに食われてくれるってんなら

友情ってやつ信じていいぜ

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