夢中で歌い出す君に
私の声は届かない
ご機嫌なメロディには
言葉じゃ昇華しきれない
歌じゃなきゃ現せない
感情や空想が乗っているらしい
君の世界のカケラを聴いては
君の気持ちを想像するよ
ただ健やかであればいい
安心と幸福で満ちればいい
最悪の気分で歩く帰り道
ぐしゃぐしゃの顔に服はぼろぼろ
晩夏の早朝は風が冷たく
手足のすり傷にしみた
こんな事を飽きもせずに何度繰り返すのか
馬鹿な自分に嫌気が差す
ああ、わかってるよ悪いのは全部自分
家まで後少しのところ
明るさを増す空に顔を上げると
茜と青、鱗状のグラデーション
1分1秒変化する空の美しさに目を奪われて足を止めた
こんな空前にも見たな
懐かしい声が聞こえた気がした
乾いた涙の跡をなぞるようにまた流れた
拭って誤魔化すように歩き出す
戻れない日々に思いを馳せたって
あの頃のあいつはもういないというのに
ドアを開けシャワーを浴びると
髪も乾かさずにベッドに寝転んだ
もうやめてしまおうか
もう全部捨ててしまおう
明日目が覚めても今度こそは
この決心が揺らがないように
そう強く想った
あなたの心はふわふわと優しく魅力的で
手を伸ばしてみるけど
触れたそばから消えていく
こんなに近くに見えるのに、
すうっと空に溶けて 掴めない
うたた寝から覚めた夕方5時
田舎町に鳴り響く童謡
ああそうだここは実家だ
仕事も人間関係も何もかも嫌になって逃げ帰って
今日でもう1週間がたつ。
何も言わずに毎日温かいご飯をくれる祖母に
少し後ろめたさと居心地の悪さを感じ始めた。
いつまでも途方に暮れては居られないなぁ
そう感じられる程には身も心も元気を蓄えられた。
台風が過ぎ、さらさらと心地の良い風が吹いた。
さあ前に進もう。
私の人生、転んだってまだまだ序章だ。
私の大好きな空。
ちいさな命をこの身に抱えていたあのときも
たくさんの空を切り抜いた。
澄んだ空、あかい空、遠い空、猛々しい空、
どんな空も美しく私を魅了した。
世界でいちばん愛おしい君には
私の宝物の名前をつけたよ。
いつかきみの名前の意味を教えたい。
いつか空から君を見下ろす時、
君が寂しくならないようにね。