真岡 入雲

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6/20/2024, 3:49:08 PM


あなたがいたから
泣き崩れずに立ち上がって

あなたがいたから
俯かずに前を向いて

あなたがいたから
ぐっと歯を食いしばって

あなたがいたから
立ち止まらず歩き続けた


「長かったなぁ、25年かぁ」

アナタと私の息子が今日、結婚します
25年前のあの日、アナタが命を懸けて守ったあの子と
2人並んで幸せそうに笑ってるわ


アナタがいないから
パパ、パパと泣く子供を抱いて
真夜中の公園を歩き続けた

アナタがいないから
夜の空に瞬く星を独りで数えた

アナタがいないから
子供の高い体温に縋って眠り

アナタがいないから
歩むべき道を見失いそうになった


「アナタとあの子、同い年になったのよ。私だけおばちゃんになっちゃったわ」

酷い人
一緒に歳をとって、縁側でお茶を飲みましょうって約束したのに
狡い人
自分だけ若いままで、変わらない笑顔でいるなんて


あなたがいなければ
なんて、一度も考えたことなんかなかった
アナタがいたなら
なんて、考えてもどうしようもないのに
考える事をやめられない

アナタがいたから
私は独りではなかった
あなたがいたから
私は独りにはならなかった

アナタもあなたも
そしてあの子も
私の大切な家族よ

え?家族が増える?
ちょっと待って、そんなの、聞いてないわよ!
幸せ過ぎて泣いちゃいそうじゃない
やめてよ、もぅ…



6/19/2024, 4:50:34 PM

少し大きな長靴と
少し大きな黄色いカッパがふたつ

小さな手と手を繋いで
ピチピチ、ちゃぷちゃぷ
リズミカルに歩く

傘を差し出すと
手を繋げなくなるから
要らないと言う

そうか、キミ達は
まだまだ片手で傘を持てないか

まぁ、このままでもいいかな
とか考えていたら
2人でコソコソ相談している
何だろう?としばらく待っていると
2人同時に振り返って
小さな手を差し出した

うん?え?傘欲しい?
はいはい
ん?コレジャナイ?そっち?
これはママの傘…
あー、はいはい、わかりましたよー
ママの透明な傘貸してあげるから
大きな声で騒がないでねー

キミ達には大きい傘なんだけどな
まぁ、器用に2人で持って
相合傘ですか


「で、ソレ?」
「そう」

ちょっとソコ
肩を震わせて笑わないように!
私だって少し恥ずかしいんだから

傘を買う時2人が選んだのは
緑色のカエルの傘
傘の上?に目玉がついてる
私が子供の頃には無かったデザインの傘

「流石にチビ達の傘じゃ濡れるでしょ」
「だって、他に傘ないよ」
「傘ならここにあるでしょ」
「それはアナタの傘でしょう。スーツ濡れると大変なんだから…って、ちょっ」
「さ、こっちも相合傘だ」
「……もう」
「さ、チビ達、お家へ帰るぞー」

ピチピチ、ちゃぷちゃぷ
リズミカルな足音

今週末、久しぶりに温泉でもどうかって
そりゃぁ、行けるなら行きたいけど…
お姉さんが預かってくれる?
ん?彼氏と?
え?小児科医?子持ち?
へぇ、あの子達と同い年か
そうだね、友達になれるといいね
え?1泊2日で?旅館予約済み?
近場でゴメンって、この旅館この間テレビで特集やってた所じゃない!
1泊5万くらいする…え?無料?懸賞で当たった?

「どう?」
「ンもう、最高!」

ピチピチ、ちゃぷちゃぷ、チュッ♡