「一件のLINEメッセージがあります。」
そのとき私は、自分のおへそを確認した。
私は何のエネルギーと繋がったのだろうか。
私は自分のへそをさぐる。
右手と左手を重ねて、おへその上にそっと置いてみる。
右手をしたに重ねてみて、おへそと右のてのひらで会話させてみる。
右手はあたたかく、へそは落ち着いて右手のぬくもりを受け取っている。
左手をしたに重ねなおしてみる。おへそと左のてのひらを、触覚をつかって近づけてみる。
おへそはすこし、ぎこちなく、左手の熱を感じて、もじもじしているかのようだった。左手は少しこわごわと、与えるというよりへそから何かを受け取っているようで、左腕全体にピクリと動きが何度か走った。
一件のLINEメッセージ。
私の肉体に紡がれたライン。
私の魂に刻まれたライン。
DNAの青写真。
私は私のへそからつながるコードを思う。
コードの先にあるラインを思う。
私は両手のひらを、へそからどかし、LINEアプリの新着メッセージをひらこうか、機械を手にして指を迷わせる。
私は再び両てのひらを、へそに重ねた。
指をからませ、両方のてをかさねてへそにそっと近づけた。
おへそもおなかも、さっきよりも、外の世界を確認しようと機械を手にした瞬間より、ずっとやわらかくあたたかく安心したように呼吸にあわせてやすらいでいた。
私はやすらかな自分のへそやおなかとしばらくそのままくつろいでいた。
そうして、少しだけ目を閉じた。
まどろむすこしの瞬間に、私はまぶたの裏に混乱した色のついた線をみることが時々あった。
正確にそれがなにかを内側から思い出すことはできずとも、それは自分自身の隠れた叫びや苦しさなのではと私はひそかに思っていた。
おへそにてのひらをかさねてまどろむ。
私の線に、いま、きっと、混乱はない。
少し目を開け、私は重ねていた掌を解放し、てのひらにもある線をしばし見た。
てのひらに刻まれたこの線が、どんなものだろうと、わたしのおへそとおなかの底はこれが刻まれたてのひらで、さっきより深く息がとおり、さっきより世界をあたたかく感じている。
ひとつのラインとつながりをもつ、その喜び。苦しさ。葛藤。豊かにかきたてられる全てをよく知るわたしのおへそ。
どんなエネルギーとつながりをもつか、どんなラインとつながるのか、そしてなにを受け取り手放すのか。
私はてのひらをそっとへそに重ねる。
しずけさがもう少しひろがったあとで、私はもう一度選んでいこう。
私がうけとってきたラインのバトン。
わたしがほどいてきた絡まったつながり。
わたしがうけとっていく宇宙とのつながり。
わたしがつないでいく、あたたかさ。
一件のLINEメッセージがわたしへコンタクトをとってきた。
誰が発したエネルギーであろうとも、
どんなメッセージが書かれていようとも、
そこにはわたし自身への、気づきを促すメッセージが隠れている。
世界がわたしへコンタクトをとってきた。
宇宙が流れにのるよう誘ってきた。
わたしはおへそに手を当てて、おへそと、てのひらの間に、静かな信頼がうまれていく様を観察した。
わたしの肉体へわたされたライン。
わたしのエネルギーとからんでいたライン。
わたしの本当に沿うべきライン。
わたしは少し、顎と、背骨と、骨盤の位置を正してみる。
わたしの沿うべきラインとつながるために。
とてもしずかだ。
静けさでからだが満たされる。
静けさでからだが満たされる。
静けさでからだが満たされる。
静寂と安堵に包まれてわたしはもう一度、あたらしくやってきたエネルギーラインとのつながりを確認した。
一件のLINEメッセージがあります。
機械にうつるそのメッセージを受けとる私の瞳、私のおへそ、おなかの底は、どこまでもしずかに柔らいでいた。