理想郷について考えたことはあるか。
人が理想郷と呼ぶこの世界で、僕は毎日のように考える。本当にこの世界は理想郷なのだろうか、と。
確かに他の世界に比べ、争いはなく、平和であると言えよう。意見を言うのも、行うのも自由だ。
縛るものなど何も無い。法律という他の世界にあるらしい、制限するものもこの世界にはない。
それでも平和なのは、この世界が停滞した世界だからなのだろう。進化しない代わりに、平和を得た。この世界は本当に、理想郷なのだろうか。
僕はこの答えをこれからも考え続けていく。.........たとえ、その結論が何を生み出すのだとしても。
言葉はいらない、ただ……認めて、欲しかった。
言葉などなくてもいい。ただそこに、そこに僕はいるのだと。この身体は決して作り物ではないと、幻ではないと認めて欲しかった。
誰も僕に気づかない。気づいていても知らんぷり。僕は存在しているのか。誰からも認められず、そこにあるだけのものは存在していると言えるのか。
今日も僕は、ただ………認めてくれる人を、探し求める。
目が覚めるまでに
あなたの目が覚めるまでに部屋を片付けておこう。庭に花を植えておこう。食事を用意しておこう。あなたが気になっていた小説も買っておこう。
いつ目覚めてもいいように、全てを整えておくから。
早く、目を覚まして。
目が覚める前に、私が死んでしまわぬように。
病室
今日も目が覚めた時見るのは白い天井。もう、自室の天井を見ることは叶わないらしい。
普通なら、悲しく思えるはずのそれも僕にとってなんともない。
ただ、あの時の返事をしていないことだけが心残りだ。
でも、きっともうすぐできるだろう。今日こそは、君も迎え入れてくれるだろうから。
20××/〇/△
僕の心臓はもう動かない。やっと、君に会えるね。
少年は、同じ病室でかつて死んだ少女の名を口にして、息を引き取ったという。
明日、もし晴れたなら
今日も雨、昨日も雨。きっと明日も雨だろう。この終わってしまった世界で青空を見ることはきっと叶わない。けれど、明日、もし晴れたなら。もし晴れたなら、いつもより遠くまで行ってみよう。きっと何も残っていないけれど、それでも青空がそこにあったなら。それだけで世界は輝いて見える。なんて、昨日も思って、一昨日も考えて、結局晴れたことは無い。母も、青空を見た事はないらしい。祖母の小さな頃は一日中晴れていた日もあったそうだ。今ではただの一時さえ、晴れることは無い。
もしも、明日晴れたなら。その日は遠くまで行ってみよう。