胸が高鳴る
今日、貴方が私に会いに来るらしい。数日前に貴方から貰った手紙にはそう記してあった。
外で物音が聞こえる度、期待してしまう。
配達のチャイムにすらいちいち腹立ただしく思う。
結局、貴方が来たのは 日が落ちかけている頃。
ヘラヘラと笑う貴方の顔には、焦り走ったであろう汗が額を伝っていた。
……今回は、高鳴りの幸福感とその汗に免じて許してあげますよ。
【絆】
私と父上は絆以上で繋がれた何かがあると信じている。
遺伝子などそのような生物学的ではなく、絆よりも上位的な何かで、だ。そう思わされる事は度々ある。
例えば、父上の望む物は全てと言っていい程分かるし、一寸でも目をくばせれば同時に立ち上がる事もできる。そうだ、確か歩幅や速度も全くズレなく一緒になる事が度々あったかな。今はすぐに思い出せるものを行ったけど、当然この他にも沢山ある。
昨日は初めて父上と喧嘩をした日だった。初めて殴られたんだ。本で顔を殴られた。最高に嬉しかった。今まで「血縁関係などではない絆以上の何か」とボンヤリしていた物が私の頬を赤く染め実態に表してくれた。ほら、見えるでしょう?まだ少し赤いの。内出血かな。
うふふ──
この痕が消える前に、もう一度父上と喧嘩をしようと思う。今度はもっと酷い喧嘩。骨だと治ってしまうから。皮膚に、肉に、魂に刻みつけるように。この日喧嘩した痕が概念を上回るようにしよう。
願い事
もしも叶うならば
貴方の手を握らせて欲しい
貴方の傍にずっと居させて欲しい
貴方より先に逝かせてほしかった
遠くへ行きたい
あなたと二人で 少しだけ故郷を忘れて
どこでもいいから 手を繋いで
海にでも行って 水平線眺めたり
山にでも行って 町を見下ろしたり
あなたの見ている景色が好き
あなたが 景色を見たあと
こっちを見て 淡く笑いかけてくれるのも
青く深く
空が染まっている
自身の体を動かす気力もないまま空を見続けてあなたの事を思い続けている
まるで生き殺しだ、貴方は何故私よりも若く散るのだろう
なぜ私の様な老いぼれは生きるのだろう
昔から今までずっとそうだ 良い人は死に、どうでもいい人だけが蔓延っている
あぁ、早く貴方の所へ