そのイルミネーションは、人気の少ない道を照らしていた
ちか、ちかと光る度に
アスファルトが赤や青に照らされていた
それになんだか引き込まれて
ぼくも一緒にちか、ちかと照らされていた
ほう、と吐いた白い息は空にのぼっていった
めいっぱいの愛を注いで
誰かを大切にできたなら
私は今日より少しつよくなれるかな。
めいっぱいの愛を注いで
君のこころの隙間を満たせたら
私は今日より少しやさしくなれるかな。
めいっぱいの愛を注いで
私をいたわることができたら
私は明日も生きていけるかな。
未来の私へ。
お元気ですか。楽しいことはありますか、大切な人は居ますか。
理想の、かっこいい大人になれていますか。
子供のままでいられたらいいのに。大人になんてなりたくない。なれる訳もない、なっていい訳がない。
そんなことを考え出すとグルグル止まらない。
未来の私へ。幸せに生きててください、頼んだぞ。
私の前世はモンシロチョウだ。信じられないだろうが、物心ついた頃からそうだという記憶がある。
菜の花畑を飛んでいたら人間に網で捕まえられて、プラスチックのかごで保管されていた。短い寿命だったが、その少年は私のとこをとても大切にしてくれていた。毎朝かごを覗き込んでは「おはよう、げんき?」と聞いてくる太陽のような笑顔をよく覚えている。
そんな私も人間としてこの世に生まれ落ちて早19年、気付けば大学生になっていた。前世を覚えている子供、なんてのは時々テレビで特集されていたりするが、この歳になっても覚えているというのは珍しいんだろうか。まあ言っても信じてもらえないだろうからそもそも他人に言うことは今となっては少ない。
……ただ、あの時の少年がこの世にいるのなら、死ぬまでに1度会ってみたい。そんなことを思いながらぼんやり道を歩いていたら、小さな段差につまづいて転んでしまった。
「大丈夫ですか?」
ふと上から声が聞こえた。どこかで聞いたことがある声だ。見上げると、私を心配そうに覗く男性の姿があった。
どこかで見たことがある。間違いない、あの時の少年だ。
「ありがとうございます。……あの、もしかして───」