しゅう

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 私の前世はモンシロチョウだ。信じられないだろうが、物心ついた頃からそうだという記憶がある。
 菜の花畑を飛んでいたら人間に網で捕まえられて、プラスチックのかごで保管されていた。短い寿命だったが、その少年は私のとこをとても大切にしてくれていた。毎朝かごを覗き込んでは「おはよう、げんき?」と聞いてくる太陽のような笑顔をよく覚えている。

 そんな私も人間としてこの世に生まれ落ちて早19年、気付けば大学生になっていた。前世を覚えている子供、なんてのは時々テレビで特集されていたりするが、この歳になっても覚えているというのは珍しいんだろうか。まあ言っても信じてもらえないだろうからそもそも他人に言うことは今となっては少ない。
 ……ただ、あの時の少年がこの世にいるのなら、死ぬまでに1度会ってみたい。そんなことを思いながらぼんやり道を歩いていたら、小さな段差につまづいて転んでしまった。
 「大丈夫ですか?」
 ふと上から声が聞こえた。どこかで聞いたことがある声だ。見上げると、私を心配そうに覗く男性の姿があった。
 どこかで見たことがある。間違いない、あの時の少年だ。

「ありがとうございます。……あの、もしかして───」

5/11/2024, 7:24:09 AM