男が私の手を引いて走る。
男は筋肉質で背が高い。
しばらく走った。
何かから逃げているみたいだ。
もう走れない、、と私が訴えると、
近くにあった小屋に2人で飛び込んだ。
はぁはぁと荒い息づかいで、
2人はその場に座り込む。
3畳ほどしかない、小さな小屋。
明かりもない、昼間でも暗い部屋。
周りは静かで、
2人の息の音だけが部屋の中で響く。
手が触れた。
見つめ合う。
私の中に、
何かが湧いてくるのを感じた。
男の胸板に手をあてる。
夢が醒める前に。
その唇に、、。
「!!ララララィッララララィッラララ…!!」
もう何年も変えていないアラーム音が
私の頭をたたく。
ああああああ!!!!
あとちょっとだったああああ!!!!
もう一回寝て続きを……
「ママー起きてーーー」
あああああああああああああ
この映画めっちゃ泣けるって。
ハンカチちゃんと持ってきた?
え、泣かないよ?
なんで、泣いたらいいじゃん。
泣けないんだもん。
なにそれ、感動とかしないの?
感動はする。
でも泣くほどじゃないんでしょ?
どうして、、めちゃくちゃ感動してたら、
泣かなくちゃいけないものなの?
感動したら泣くでしょー。
はぁ。
お、始まった。
映画を見ながら隣を見ると、
マッチングアプリで出会った男は
イビキをかいてる。
バレないように、映画館を出た。
出てすぐに、マッチングアプリを開く。
さっきの男の画面、
ポチっと、ブロック。
男は起きて、慌てるだろうか。
アプリから私に怒りのメッセージを
送ろうとするだろうか。
悪いことをしたとは思うよ。
ごめんね。
おばけかなんかだったと思って、
忘れて、
他のすてきな女性に出会ってください。
感動したら、きちんと泣けるような、
そんな女性に。
怖がりな君は、ホラー映画を1人で見られない。
僕がいるときにしか見ない。
僕がいると、僕よりも怖がらずに、
画面を凝視している。
終わった後も、
あそこの作り物感がたまらないね、
なんて、冷静に感想を言ったりしてる。
トイレも1人で行ける。
僕は終わった後、トイレに1人で行くのが怖い。
怖がりなんだ、僕は。
それでも君はホラー映画を一緒に見たがる。
僕はホラー映画を一緒に見たがる君も好きだから、
怖いけど、
今日もホラー映画を見るよ。
ほんとはめちゃくちゃ怖いけど、
がんばって見るよ。
星が溢れてる。
君の手から。
こぼれる星が、
床に落ちて、
僕はそれを
拾って食べた。
もっと知りたいな、君のこと。
そう言いながら、君は上目遣いで僕をみつめる。
なんてかわいいんだ。なんでこんなかわいい子が僕に興味をもってくれるんだ。あぁやっと、まじめに生きてきた僕のこれまでの人生が報われるときがきたんだ。僕の人生はこれからだ。これからこの子とごはんに行ったり水族館に行ったりして、どんどん仲良くなって、僕が告白。付き合い始めて、初めて手をつなぐんだ。もっと一緒にいたいねって話になって、旅行を計画するんだ。初めて過ごす夜。ついに2人はひとつになるんだ。私…初めてなの…優しくしてね、なんて君は言うんだ。そして、僕は、
けっこうバイトしてるって言ってたよね?
貯金もいっぱいあるの?
彼女いない歴20年の僕はアルバイトばかりして使うところがないから、お金ならたくさんあるよ。あぁ、そうか、もしかして、もう結婚を視野に入れてるのかな。なるほどね、だから僕の経済力を気にしてるんだ。大丈夫だよ。お金の心配はさせないさ。僕は、
いい話あってさ、これなんだけど、これ、これから絶対くるって話で、私にある程度お金預けてくれたら絶対増えるから。最低でも2倍にはなるよ。絶対。
僕は…僕は…