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7/7/2024, 9:56:12 PM

七夕

あ〜もう!七夕の儀式がまた来るぅ〜

織姫はジタバタとしていた。
既に形骸化した儀式で子供は成人し会いに来るわけではなくて、地上での刹那の時を過ごした夫彦星は地上での生を終えていた。気の毒にとも思う。自分達の愛を貫く為に次の生を受ける事もなく永遠を生きる事になっている。天界に生きる事とは違うのに。

地上はいいだろう。自由に出来ない結婚の不条理とか、それでも愛を貫くなど言って、お願い事までする始末。
橋となるカササギも気の毒だ。
毎回、新人の集合訓練に使っているのだから、ちゃっかりはしている。

妾はどうだ?
会えるのは嬉しいかと言われるとそうでもない。
地上では好き勝手に結婚し別れる、または不倫だ。
願いを書いた者を追跡観察をしてみたら、すぐに心変わりをしていた。今年の願いも同じだろう。
なぜ、皆、想いを遂げたのに貫かぬ?
妾は地上に影響される。願いが澄んでいれば何も躊躇う事なく夫に会えるというに。

今年も妾だけを想って、妾がカササギの橋を渡るのを待っているか心配しなくても良いのに。

7/6/2024, 10:17:58 PM

星空
友だちの思い出

満天の星空で空気は澄んで夜風は気持ちいい。
零れ落ちてきそうな程の星の煌めきに涙が出てくる。

知っている?あの星の煌めきは生きている人の命の輝きだっていう事。数えきれない人の数を思うと星の数程って言葉は間違いじゃないって思うのだけど。

え?死んだ人じゃないのか?お母さんは星になりましたって言われたぞ。

お互いに顔を見合わす。
そして、吹き出し大声で笑う。

どっちでもいいか。星見て、思い出すのが生きている誰かでも、亡くなった人でも、自分にとっては大事な人って事だろう?こうやって話しかけているんだからな。
笑い声もう一度聞きたいよ。
星の煌めきの中に自分もいるなら会えるかな。
友だち以上になりたかった。星みたいにキラキラしていた君と。いつか会おう!星の中で。

7/4/2024, 9:55:12 PM

神様だけが知っている

自分が何をしたいか、何に喜怒哀楽を感じるか?
なぜ誰かを必要とするのか?
納得行く答えが自分で出せる時は、無理矢理理屈をひねり出したわけではない。誰もが違うと言ってもそうとしか思えない確信があるからだ。もちろん、すこし病んでいるような事もあるが…。

この電車に乗り合わせた見ず知らずの誰かにも同じ様な事があるのかもしれない。環境は違うし、日々感じる事も違う。それでも…。

なぜ生まれ死んでいくのか?
何か感得してもきっと正しい事の一部で全てではないだろう。

この世界にいる全てのものが何かを求めている。
知らない手助けをされているのかもしれない。
誰かが哀しい想いをしたとしても。
それは神様だけが知っている事。

神様に見られていると思うと文句言いながら仕事したらいかんと思う通勤電車の中。

7/3/2024, 10:05:55 PM

この道の先に


さぁ、行くのです。かわいいワタシのコドモ達。この荒れた道を超えて天で待つ聖なる父と母の元へ。

両腕を大きく広げ、掌を空に向けて妙な熱気と陶酔した表情で見つめる老若男女を見下ろす。ゆっくりと一本の道を指差しうなづく。
一人一人緩慢な動きで指し示された道へノロノロと歩き出す。やがて一列となり先頭が点のように見える。
そして絶叫が聞こえてきた。

幾人が恐怖の表情を浮かべて走り戻ってきた。

道が突然大穴になり皆を飲み込んでしまった。これは天への道なのですか?

慌てる事なくそうだとうなづく。父と母は空腹なのです。その子もまた空腹で笑みを保てません。

顎が嘘だろうというぐらい開き長い蔓のような舌が
救いを求めに来た幾人かを絡め取り飲み込んだ。
か、満腹感が欲しかった為しっかりと咀嚼した。

次の食料調達は この道の先にあるだろう。
肉はいいから野菜にしよう。バランスは必要だ。

7/1/2024, 10:19:55 PM

窓越しにみえるのは

たった一枚の分厚いガラス窓の向こうは憧れの世界だ。
緑の草原、まっすぐ伸びるポプラ並木、あの先には何があるのだろうか?。
両手をベタってくっつけて顔も近づけて窓越しの世界を見つめているのはほぼ日課になっている。 

巡回している警備隊員が横目で視認して通り過ぎて行く。ここで会う事ができるのは警備隊員だけだ。
何故か分からないが。詰所が近くにあるはずなのだが、いつも不意な現れて、何も言わずに規則正しく歩いて行く。武器の類いは持っていない。ここにどのくらいいるのかわからない。罪人なのだろうか?何の? 
窓越しにみる景色を見ながらそう思うようになった。

激しい揺れだ。聞き慣れない警報が鳴り響く。
自由だった部屋の出入りが制限された。部屋に閉じ込められた。部屋な窓は小さくて曇っているから外は見えないから好きではない。腹に響く振動がしたのち少しすると揺れはなくなり静かぬなった。
窓が明るい。曇りがとれている。顔よりも小さな窓に顔をくっつける。砂漠?いつも見ていた景色とは違うが、
生々しい感じがする。
換気口から異臭がする。

退避を促す警報が鳴り響き、部屋のロックが外れた。
部屋から出ていつもの場所にまっすぐに行く。
砂嵐のような模様になり、バチバチと稲光までしている。偽物だったのか。そうだ、思い出した。
戦争の後地上には生物は住めなくなって空に逃げたんだ。コールドスリーブで、
制御室へ行くと誰もいなかった。正確には目覚めなかった人達を確認する。随分、前に耐用年数が過ぎていたらしい。警備隊員が倒れている。ロボットだ。
もう燃料切れらしく、真っ暗だ。息が苦しい。
窓はないか?無理矢理ドアを開けて窓を探す。 
窓越しにみえるものは希望か絶望か?
どちらでもいい。生きていると教えて欲しい。

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