きみは、なにを描く?
【未来】
小学校に入学した年
創立100周年記念にと、全校生徒でタイムカプセルを埋めた。
25年後に掘り起こしたそのカプセルに
私が入れていたものは
よくわからない作文と
描いた覚えのない絵。笑
6歳の私に
『未来に残したいもの』は難しすぎたんだ。
今ならもっと。
もっともっと。
描きたいものがたくさんあるよ。
そういえば。
前日の【1年前】ってお題に
私は未来を想像したんだった。
未来の私から見た
1年前の今日の自分が
輝いて見えたらいいな と。
過去も未来も
愛せたらいいな と。
一枚目は紅色の着物に照れて
二枚目は誕生日ケーキの蝋燭の火に喜んで
三枚目は満開の桜に見とれて
四枚目は風に揺れるチューリップに微笑んで
五枚目は温泉旅館の御膳に手を合わせて
六枚目はホタルのひかりに目を潤ませた
1月から始まるカレンダーは
めくるたびに去年のきみを連れてくる
この一枚をめくったら
どんなきみに出会えるかな
来年のカレンダーも
その先のカレンダーも
ぜんぶきみで埋まればいい
【1年前】
表紙の内側にオルゴールが埋め込まれた絵本
祖母がプレゼントしてくれたその本が
私のお気に入りだった
優しいメロディーをBGMに
母が読んでくれた『三匹のこぶた』
あれを超える名作を
私は知らない
【好きな本】
どんより濁った雲と
はっきりしない天気予報の数字
それを見ながら
いつもより早く家を出る
君の影を探しながら飲む
いつものカフェのコーヒーが
なんだか今日は少し甘い
見つけた顔の眉間に
思わず笑いたくなるような深い皺
忍ばせた折りたたみ傘は
君に近づくための少しの希望
夕方の空に答えを託す
臆病な僕を笑わないでいて
【あいまいな空】
集まって咲く花を
きれいだねって眺めながら
あたしを見て笑うきみが
愛おしいなと思う
ベッドルームから初めて抜け出したあたしたちは
お互いがなに色が好きかも知らない
お酒の香りと月の灯りだけじゃ
気づけなかったはずの想い
シャッター音が閉じ込めた花は
出会った場所に飾られて
目の前にいるきみを見ながら
あたしはハートマークを押すの
デタラメな順番でした恋を
真っ白なあじさいが見てる
【あじさい】
私、前日のお題に紫陽花いれたのにー
ってため息ついちゃったのは内緒で。笑