6/21/2023, 12:51:40 PM
鞄は熟成されたワインのような、深い赤。
小物はなるべくダークブラウンの本革で揃えて。
同じ色、おなじ材質で持ち物を揃えるから、鞄を覗いても何処に何があるか分からないタイプのダメ人間です。
毎回ハンカチの大捜査。
放り込んだペンを取り出すのに5分はかかる。
そんな私を見て呆れていた君。が、ある日手渡してきた小さな包み紙。
木の小箱に入っていたのは、桜色の綺麗な扇子。
「これなら見つけやすいでしょ」
そう言って笑う君に、「私に似合う色じゃないよ」なんてモゴモゴ言いつつ。
ありがとう、と大事に鞄に仕舞い込んだ。
6年前の誕生日の、話。
そんなこともあったよねぇ、なんて思いつつ、相変わらず赤色の鞄を持って、革の定期入れを片手に初夏の街へと歩き出す。
鞄を覗けば、沢山の好きな色。
その中で一等目立つ、薄桜。
飄々としてる癖に柔らかな優しさを感じる、君の色。
うん、確かに見つけやすいね。
独り笑って、取り出した扇子で目元を煽いだ。
#好きな色
6/20/2023, 10:23:11 AM
緩やかな坂道を下って、右手にある道。
新しい家が建って無くなった、小さな道。
学校の脇を通り抜ける秘密の小道。
もちろん、別に近所に住んでる人は当然知っているし、どこにでもあるありふれた道だったんだろうけど。
私にとっては秘密基地みたいな通り道だった。
秘密の小道から見下ろす、体育館。
夕方4時、学校帰り。
響くホイッスルと、扉からチラリと見えるユニフォーム。
少し息を詰めて、ゆっくり歩いて、そうして、ほら、ボールがバウンドして。
今日も部活に勤しむ君を、こっそり横目で捉えるのです。
誰にもバレずに君を盗み見れる、特別な場所。
君がいたからこそ、私にとって秘密の小道だったんだよ。
#あなたがいたから