『記憶の地図』
ショッピングモールの中を歩いている時、
街なかを車で走っている時。
そこにあった店舗が無くなっていたり、建物が壊されて更地になっているのを見て、それまでそこに何のお店や建物があったのか思い出せないことが多々ある。
自分がよく利用する場所でないと、風景の一部としか認識していないのだろう。
家から駅までを地図に書けと言われたら書けるけれど、その途中にある建物や店舗まで書けと言われたら、多分書けない。
自分が住んでいる街を、私はどれだけ記憶しているだろう。
もし引っ越すことになったとしたら、懐かしく思い出すのはきっとほんの一部。
もう少し、いろんなものを記憶しておこうかな。
『マグカップ』
普段使っているマグカップが、欠けてしまった。
そのまま使い続けてもよかったのだけれど、食器を洗う時に手を切りそうになったので新しいものを買うことにした。
さて、どんなのにしよう。
これといってこだわりはなかったが、臨時で使っている貰い物のマグカップが下から上へ広がるような形でどうにも不安定だ。
何度か倒して零してしまった。
なので、新しいのは安定感を重視しよう。
そう思ってから数日、某ドラッグストアでレシートの点数を集めるとマグカップやお皿が割安で買えるキャンペーンをやっていた。
サンプルを見ると、実にどっしりとして安定感がある。
絵柄も可愛い。
これにしようと、レシートを捨てずにとっておき、ついに手に入れた。
うんうん、いい感じ。
また割ったり欠けたりするまでは、これでいこう。
『君だけのメロディ』
頭の中でぐるぐると鳴り続けるメロディを、イヤーワームというそうな。
多分、過去に耳にして脳に眠っていたものが、ふとした拍子に思い出されるのだろう。
少し前だが、朝から晩までずっと頭から離れないメロディがあった。
Googleの音声検索で調べても、それらしい曲はヒットせず。
知人友人同僚にまで鼻歌で聞かせても、誰も思い当たる人はいなかった。
もしかしたら、あれは私の脳が生み出したものだったのかも。
私だけのメロディ。
そうとでも思わないと、曲名がわかるまでずっとモヤモヤしてしまう。
『I love』
本が好きだ。
読むのはもちろんのこと、ただ並べて眺めるだけでも楽しい。
著者順にするか、出版社順にするか、ジャンル別にするか。
たまに、シリーズものの背表紙が一続きの絵になっていたりするのもいい。
本棚から一冊抜き取ったときの、あの重み。
文庫本なら軽やかに、ハードカバーの単行本はずっしりと。
薄くて気軽に読めるもの、
上下二段組みでじっくり腰を据えて読み解くもの。
私の読書スタイルは、本の中に分け入り、頭の中で映像として再生されるタイプだ。
現実ではなかなか行くことのない世界に入り込むことができる。
宇宙でも、異世界でも、殺人現場でも。
両手の中に収まる、この小さくて大きな世界を私は愛している。
『雨音に包まれて』
ショパンのピアノ曲は、雨だれのようだと思う。
旋律の美しさと、気品。
結晶のような作品の数々。
ショパンの純な想いが伝わってくる。
ラルゲットも
英雄ポロネーズも
ノクターンも。
どれも、ひとつひとつの音がポロポロポロンと雨粒のよう。
強く打ちつけるものもあれば、やさしく降り注ぐものもある。
そんな音に包まれて、ゆっくり紅茶でも飲みながら本を読む。
わざわざ雨のなか、仕事に出掛けることもない。
ああ、なんて理想的な生活!
いまだに実現していないけど。