暗い、辛い、苦しい、消えたい。
こんな感情を持っている私は実際無色透明で、
自分のできることは全て他人ができてしまう。
でも、他人の出来ることは私にはできない。
だから、私は1人でいたい。
………1人でいたいよ。
なのに………なんで、ネットを通じて繋がろうとしてるんだろう……
昔からお祭りのある日は嫌いだった。
屋台の焼きそばは高いし、射的の景品はチープなものばかり。それに、人の量が多すぎて暑苦しい。好きになる要素なんて、一つもなかった。
だが、私は今年の夏もお祭りに行く。行かされる。
毎年、この時期になると、親が外に行けとうるさくなるのだ。今日も仕方なく、家を出てお祭り会場その周辺へと赴いた。
「はぁ、やっぱり人が多い。」
人の多さに立ちくらみ、この場にいる自分の場違い感をひしひしと感じる。周りの人々は浴衣に、狐の仮面に、うちわなど、それっぽい衣装で会場内へと入っているのだ。それに比べて、自分は私服。夏服ではなく素肌を見せない薄着のシャツと、ぶかっとしたズボン。
こんなの、入れるわけがない。
「いいや、そこらで時間潰して帰ろ。」
クルッとその場でUターン。ここまで来た道を歩いて辿る。なるべく違和感の無いように、祭りを楽しんだかのように。
途中、信号を越えた向かい側、マンションとマンションの間に目を向ける。一瞬チラッと流れ星のように何かが光った。注目してみると、人気もなく雑草で生い茂った公園が目に入った。
「ちょい不気味だけど、あそこなら……」
時間潰しにちょうど良さそうだ。そう思い、青になった信号機を横目に白色のタイルを踏んで向こうの陸へと歩きだす。トンッ、トンッ。奈落へと落ちないよう、気をつけながら片足ずつ足を前に出す。
「ふぅ……」
目の前に広がる歩行者の陸へと辿り着くと、変に疲れが押し寄せてくる。普通に歩けば疲れないのはわかってはいるが、子供の頃からの癖で信号は白色のタイルを踏むものと身体に焼き付いてしまっていた。
多少の安心感を伴いながら、例の場所へと向かう。
「……ここか。」
マンションとマンションの間の道を通り、公園の前へと辿り着く。ブランコ、滑り台、鉄棒、砂場。大抵の遊具は揃っているものの、灯ひとつない様子は、まるで、心霊スポット。雰囲気さながらに人っ子1人なく、雑草で生い茂っている。
「ちょっと怖いな」
この公園は珍しく、ベンチの一つもない。仕方なく公園内のブランコに腰掛ける。帰る時刻はどれくらいにしようかと、腕時計で時間を確認する。キィコキィコ……。短い針が8の数字をさしており、長い針が4をさしている。キィコキィコ……。
「ん?」
何か音がすると思ったので、少しあたりを見てみれば、公園内が上下に揺れている。だが、すぐに違うと気づいた。ブランコが前へ、後ろへと動いているのだ。どうやら、私は多動症らしい。
「9時になったら帰るか。」
とりあえず、暇つぶしにブランコをこぐ。
飽きたら、鉄棒。次に、滑り台。この順番で時間を潰そう。そう考え、暗い公園の中、1人あそびが始まった。
「もういいや……」
数十分が経った頃、公園から出ようとする。もう1人遊びにも飽きたのだ。それに、ここからゆっくり歩いて帰れば、時間的にもちょうどいいだろう。ひたひたゆっくり歩いていく。やはり、お祭りのある日は嫌いだ。
そんなことを考えていると、夜闇の空に一輪の花がふんわりと咲いた。公園に光が一瞬灯る。
「……ぁ…」
情けない声が喉奥から漏れ出た。それほどに綺麗な花だ。その花は一瞬にして散ってしまったが、次の瞬間には別の花が咲いていた。──1人、公園で見る花形の星。
去年の花火は思い出すことができないが、きっと、静寂の中見るこの花火は忘れることはないだろう。
「やっぱり、お祭りは嫌いでも、花火はいいなぁ。」
今日も、花火を見て生を実感し、楽園へと帰るのであった。
部屋の隅。ベッドの上。電球がその光を消してなお、光続ける手持ちの光。光は時間を消していき、健康すらも奪ってく。そんな光で鬱になる人も少なくない。けれど安心して欲しい。鬱になるなら切ればいい。鬱になるなら薬を飲めばいい。鬱になるなら……鬱になるなら……。
閑話休題──
手持ちの光の電源消して、手持ちの光を充電器に刺す。誰でも思いつく現実からの逃避行。ここではない場所に抜け出す為に。暗闇に慣れない目を気にせずに、ゆっくり瞼を落としていく。
瞳を隠せば自由になれる。瞳を隠せば音が消える。瞳を隠せばきっと、ここではない何処かへ誘われる。
大丈夫。鬱にはならない。太陽登れば世界は崩れ、今の場所へ戻ってくる。記憶も消えて移動前。
大丈夫。瞳を閉じれば、また何処かへ行けるのだから。
ここではない何処かへ行くには、感情はいらない。
ここではない何処かは、すぐそこに。
私の好きな色はまだないけれど。世界が赤く染まった時に青色になれたらいいなと思う。