恋って素敵
全てがキラキラ輝いて見えて
世界が素晴らしいものに思える
繋いだ手の大きさにもときめいて
その包容力に安心して
そっと彼の腕に頭を寄せた
ずっとこの平穏な日常が続くと思っていたのに
「そいつ誰だよ」
私を睨んでそう言ったのは
私の息子
隣には主人と娘も居た
サァっと血の気が引く
慌てて彼と離れて言い訳をするけれど
息子は罵声を浴びせ続け
私の話を聞いてくれない
主人と娘はその間黙ったまま私を睨み続け
最後に離婚届だけを投げる様に渡して去っていった
ずっとあの平穏な日常が続くと思っていたのに
私の家族に壊された
本当に?
平穏だと思っていたのは私だけだったのかもしれない
壊したのは私だったのかもしれない
そう思える様になったのは
全てを失った後だった
平穏な日常を壊したのはーー
ゴロリと横になると、すかさず寄ってきて
顔周りクンクンしてペロペロしてきて
身体の上に乗ってくる
モフモフの君
肉球は少しひんやりでスベスベ
気まぐれに左右に揺れるシッポ
疲れた時はそのモフモフに顔をうずめ
思い切り深呼吸
あぁ、癒される
もしかして君は
愛と平和の象徴では?
楽しかった事や嬉しかった事
それらは喜びと共に思い出へ
悲しかった事悔しかった事
それらは虚しさと共に今も胸に
失ったモノは
心に大きな穴をあけ
埋めることなど出来はしない
私が息を引き取った時
全てが過ぎ去った日々となる
金の切れ目が縁の切れ目って言うでしょ?
お金より大事なものなんてないのよ?
そう言って離れていった彼女
俺は何も言えなかった
そうしてめでたく
職なし金なし彼女なしになった俺
理不尽な上司に腹を立て勢いで退職したはいいものの
新しい職を探すのは簡単ではなく
貯金を切り崩し
デートも割り勘、羽振りも悪くなった俺を見切った彼女の潔さといったら、、、
未練たらしく縋っても仕方ない
こんな時はビールをグビッと、、、
なんてする余裕も今はないのか
お金より大事なものはないのよ?
彼女の最後の言葉が蘇る
確かにそうかもな、金がないだけで、こんなに惨めな気持ちになるんだから
生きていくには金がいる
愛はなくても生きていける
そしてー
金がなけりゃ、愛は生まれねぇなぁ
やさぐれた気持ちでそう結論づけた
それでも心の奥の方では
そうではないと思いたい気持ちが
グズグズと燻っていた
ハァっと息を吐くたび
白いモヤが空中に消える
寒い冬の夜
そっと空を見上げる
今日は満月か
太陽みたいに明るいあの人は
私には眩しすぎたのだ
側にいればその熱で
身を焦がすだけだから
だから、、、、
離れて正解だったのだと
自分に言い聞かせて
前を向いた
頬を伝う涙を
月夜だけが知っている