特別な日でもないただの昼下り
皆が微笑み、心から笑っている。
私も一緒になって笑う。
皆、優しい光に包まれて
明るくて淡い絵の具で描かれている。
私だけなんで刺々しいんだろう。
唇が引きつった途端に
幸せな光景が遠のいていく。
すぐ隣に笑っている人がいるのに
額の外にいるみたい。
#平穏な日常
好きと言わないのも愛だと。
勢いで電話番号を打って、
あとひとつでつながる。
緑色の光が震えていた。
何がしたいんだろう。
気持ちを押し付けたいのか。
私の「大好き」は前とは違う。
キラキラ輝くプレゼントじゃなく、
君をまた悩みの世界に陥れるねとねとしたものだ。
新しい道を頑張る君へふさわしくない。
好きと言わないのも愛だと。
今日もスリープボタンを押した。
#大好きな君へ
「 」
昔の恋人に思ってた言葉。
ずっとしまっていたはずなのに、
朝の起きがけに君に言ってしまった。
君は家を飛び出した。
最低だ。
君を傷つけたのに、まだ言い訳を探してる。
夜になって車の中で震えていた。
傷ついた過去は
誰かを傷つけていい理由になんかならない。
そんなの分かっているのに。
窓ガラスを叩いた。
君は今、嫌いになったよね。
#君は今
のんびりのんびり歩く広い背中。
生ぬるい風から汗の匂いがする。
通行人に手を上げて挨拶する。
豪快な笑い声。
この人なら何でも受け止めてくれる。
何を言っても受け止めてくれる。
私は気楽についていく。
#太陽のような
旅先で、おみくじをひいた。
「今日一緒に来られなかった人に
海岸の赤い石を拾ってお土産にしなさい」
石さえあれば会えるような気がして
海岸でおみくじ通りの石を探した。
道中では「この場所に君がいたら」
が繰り返し浮かんだ。
移動中に一口昆布食べてるときも
きれいな景色を見たときも。
思い出がちょっと残る家に帰ってきて、
終わっていたことを思い出した。
赤い石は、「君とこの場所で」
なんて気持ちと一緒にしまいこんだ。
#この場所で