まにこ

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9/19/2024, 11:09:20 PM

例えば今この瞬間だけでも時を止められたなら。
少年には大好きな先生がいる。
その先生と今日が最後の逢瀬だとしたら。
なんのことは無い、先生は結婚して遠い国へと旅立ってしまうのだ。
この熱く滾るような思いをぶつけた時に、先刻その答えを知った。
神様、僕の初恋がこんなオチだってあんまりじゃありませんか。
果たして少年の願いは聞き届けられたのだろう。
ローテーブルの向かい側に座る先生は瞬きもせず、突如ピタリとその動きが止まった。
いつか触れてみたかったその頬、形のいい唇。そっと手を這わす。
少年には知識が無い。しかし無いなりに薄らぼんやりした性の意識はあった。
きっとこれはやってはいけないこと。超えてはいけないボーダーライン。
それでもこの機会を逃したくない。
ずっとこうしていたいなあ。どうかずっと時を止めて。

9/18/2024, 10:28:20 PM

ある人は言った。
「人工物の光だね」
ある人は言った。
「わあ、綺麗」
同じものを見てもこうも受け取り方が違うのか。
物事というのは一面だけでなく、必要に応じてその裏側や斜め後ろからなど多角的に見る必要がある。
……と、つらつら書いてはみたものの、筆者が中々身につけることのできないスキルの一つだ。
とは言ったものの、夜景に関しては素直に「綺麗だ」と思える素直な感性でいたい。

9/17/2024, 11:10:48 PM

ふわ、ふわ、ふんわり
あの子はいつもお花畑
頭の中を覗いてみたい
パステルカラーが彩る世界
混じりっけのない純度100%
時々石っころを蹴ってみるけど
やっぱりすぐにお花畑
傷ひとつないお花畑
だから時々花を摘む
少しずつ少しずつ
そうやっていつの間にか
草と石と砂漠になればいい

9/16/2024, 10:30:15 PM

バケツをひっくり返したような大雨が降り始めた。
B男は突然の雨に驚きつつも、鞄で頭を覆いながらひた走る。
間に合え、どうか間に合ってくれ……!
祈るような気持ちで、靴に泥が跳ねるのも構わず走り続けた。
びしょ濡れのまま、脇目も振らずに建物の中に飛び込む。
目的の部屋が近付く。廊下には既に両親達が勢揃いしている。
「おぎゃあ、おぎゃあ、おぎゃあ」
間に合った……!
その泣き声は外の天気とは裏腹に、幸せに満ち溢れていた。
B男は思わず込み上げる涙を堪えることができない。
愛しい我が子に会えるのを今か今かと待ち続けた。

9/15/2024, 9:12:28 PM

一生懸命文字を打ったのだろう、祖母のLINE。
誤字脱字は当たり前、内容にそぐわないスタンプも沢山あった。
今となってはどれも素敵な思い出の宝箱に大切に保管している。
ばあちゃん、またLINEしてきてよ。間違って電話を掛けてきても構わないから。
もう二度と更新されることのないトーク履歴を指でそっとなぞった。

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