NoName

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8/31/2023, 2:20:27 PM

不完全な僕

そもそも私は魔石になる為に生まれた人間だ
人に嫌われるのが標準であるし、好かれようとも思ったことがない
父のために。頼まれた兄、領地のために。役に立たないと生きている意味が無いと思っていた

そんな人間として不完全な私に、君は本当の意味での生きている理由をくれた
どうかこれからも私の生きる理由となって欲しい
私の全ての女神よ

8/27/2023, 1:58:11 PM

雨に佇む

図書館から出ると大雨が降っていた。この時期は夕立があるから仕方ないよね。
「はぁ〜…」
仕方ないとは思うけど、ため息はでるよね。だって、傘持ってきてないんだよ!!!借りた本あるのに!!!
これはもう本借りるの諦めて、濡れて帰るしか無いかなぁ。全然やみそうにないし…。
しょぼーん、と踵を返したところでポケットに入れてたスマホがブブブと震えた。
「ん?…フェルディナンド?」
画面には忙しいのにマメに連絡をくれる恋人から届いたメッセージが表示されていた。
『どうせ図書館だろう?今から迎えに行くから本を借りずに濡れて帰ろうとは思わないように。』

げ。なんでわかるんだろう…私より私の事詳しいんじゃない?…でも迎えに来てくれるんだ〜、うふふん!会えるの自体久しぶりじゃない!?
ウキウキな気持ちで今いる図書館の名前を送信して、そのまま雨の当たらない場所でフェルディナンドを待つ。
暫くすると見慣れた黒い某高級車が現れた。浮き足立ったまま駆け寄ろうとすると、運転席から傘をさしてフェルディナンドが出てきた。
「待て!その場から動くんじゃない!」
いや、私は犯人ですか?ちょっとムッとしたけど、私を濡らさないようにフェルディナンドが必死になってると思ったら、笑いが込み上げてきたから慌てて俯いて顔を隠す。
「ふふふ…」
「君は何故そうもすぐに駆け出してくるのだ。…何を笑っている。」
「だって、フェルディナンドが私を大切にしてくれるのが嬉しいのですもの!迎えに来て下さってありがとう存じます!」
顔を上げてぎゅっと腰に抱きつきながらお礼を言うと、フェルディナンドは眉間に皺を寄せて私を見ながら傘を持っていない腕を身体を支えるようにまわした。そして流れるように私のカバンを持って車までエスコートしてくれる。
「私に大事にされている自覚があるなら大変結構だが、濡れるのはいただけない。なぜ私が来るまで館内で待っていなかったのだ?」
「だって、すぐに気が付けないじゃないですか。フェルディナンドに1秒でも早く会いたいのです。」
「…全く君は。」
未だに少し険しい顔をしてるが、赤くなった耳が私からはよく見える。目は口ほどに〜っていうけど、フェルディナンドの場合は目と耳は口ほどにものを言うだね。

「それで?君のこれからの予定は?」
車を発進させたフェルディナンドが問う。やっぱりこの助手席は特等席だね!
「はい!今日借りてきた本を読む予定です!」
「では、このまま食事に行こう。そのまま泊まっていきなさい」
「え!いいのですか!?いやっふぅ!」
「…随分聞き分けがいいな。読書はよいのか?」
「え?せっかくフェルディナンドに会えたのですから、長く一緒に居たいと思うのは当たり前ではありませんか。しばらく会えてなくて、フェルディナンド不足です!」
ふんぬぅ!さっきは私の事詳しすぎるって思ったけど、まだまだだね!ぜーんぜん分かってない!
頬を膨らます私をチラリと横目にみてフェルディナンドはフッと笑う。
「そうか。そうだな、私もローゼマイン不足かもしれない。」
「!!!!ではまずはお腹を満たしてから2人で充電し合いましょう!私、今日はお魚が食べたいと思っていたのです!」
「ふむ。ではあそこの店か…それとも…」
車にあたる雨の音に、フェルディナンドの低い声が混じる。
声に集中したくて目を閉じる。こんな風に過ごせるのなら夕立に感謝だね!神に祈りを!雨に感謝を!