たった1つの希望
今夜も欲望に溺れている。
会えなかった時間を埋めるように愛し合う。
静かな真夜中。冷たい空気に乱れた呼吸が交わる。二人を照らすのはカーテンの隙間から零れる月のみだ。
二人の赤く火照った顔が輝く。
ベッドがギシギシと軋む。重なった肌に汗が滲む。
皮膚越しにドキドキと鼓動が伝わる。
耳に生ぬるい吐息といやらしい声が触れる。
翌朝、彼の隣で目が覚めた。
窓の外でチュンチュンと鳥が鳴いている。
昨晩に見合わない、爽やかな朝だ。
まだ欲望が下半身に感覚として残っている。
「おはよう」
鳥の声を聞きながら彼の顔を見つめていると水色の瞳が開いた。彼が眠たげにかすれた声を出す。
彼はんんーと唸りながら僕の腰に手を回す。
「おはよー」
彼は僕の胸の中でまた寝る準備をしている。
タイミングよくピピピとアラームがなった。
「起きて」
彼の髪をくしゃくしゃと荒く撫でる。
「アラーム止めろ…」
「だーめ」
欲望
列車に乗って
最近はよく現実逃避したくなる。
つらくなったら自分をどこか、ここじゃない空想の世界へと連れていく。
春が来るのが怖い。
春は出会いの季節というが、同時に別れの季節ともいう。今の私には別れはつらすぎる。
『こんなに別れるのがつらいなら、初めから出会わなければよかった』
そんなセリフをよく映画や漫画でよく耳にした。
あの頃は全く理解できなかった。
どんなに別れが寂しく悲しくても、出会ったことは後悔しない。そう思っていた。
でも今は痛いほど同感する。
出会ってしまったことを、好きになってしまったことを、恨んでいる。
だって離れるのがつらい。まだ一緒にいたい。
時間が止まればいいのに。何度そう思ったか。
忘れたいのに、君の可愛い笑顔が頭に張り付いて離れない。
タイムリミットが迫ってきている。
頭の中ではありえない未来ばかり。
そんな妄想の対象はもちろん君だった。
こんな未来、もうありえないのに。夢から覚めないでほしい。
現実は寂しい。
現実逃避
君は今を生きている。
それに比べて私は、君に振られてから時間が止まったままだ。
君はよく隣の席の女の子と喋ってる。
もしも私が君に気持ちを伝えてなかったら!
もう意味ないのに、そんなことを思ってしまう。
時間が解決してくれると思ってたけど、
もう告白してから随分経つのにまだ君のこと大好きなまま。
だれ?女の子からの告白は70%成功するって言ったの。彼女つくる気ないって言われたんですけど。
そんなわけないじゃん。本当に彼女つくる気ないだけで私のこと降ってたとしても、もし可愛い子に告白されたら絶対付き合うもんどうせ。
はやく忘れたい。
君は今