軌跡
私の歩いているところが室内なら
どうか地震よ来ないでください
私の歩いているところが室外なら
どうか大雪よ降らないでください
消してしまいたくなる跡なのはわかっています
太腿ですらない心に跡を隠して欲しいのも
分かっているのでどうか神様
私の跡を消さないでください
これをアートだと言いたいんです
これを軌跡だと言いたいんです
こんな私でも生きたのが奇跡だと
ハートが貰えたのだと言いたいんです
寂しいよ
苦しいよ
誰か助けてよ
誰か、誰か、誰でも良くないのに
神も消えた私を、誰でもいいから助けて
どうしようもなく弱くて、見てて苛立たしいけれど
なんの見返りも用意できない可愛くない私だけど
誰か、私の軌跡を指でなぞって
好きになれない、嫌いになれない
空港の、暗くなった空港の隅で
他人のよくできた空似を見た
ほんとによくできた空似だった
多分今はこうしてバリバリ働いてて
多分今はこうしてよく遅くまで勉強してて
多分またさらに上の夢を目指してる
きっとこの感情は「好き」ではないだろうし
きっとこの感情は「嫌い」でもないだろうし
強いて言うのなら憧れで嫉妬で、きっとこの感情は
あの人は空港で何をしてたのかな
あの人は空港で、誰を待ってたのかな
あの人に一言でも話しかけられたら、私は
……だめだなぁ、私。最悪。
巡り逢い
たくさんの詩を目の当たりにして
私の所へ来たあなたへ
ごめんなさい
私には上手に詩ぬ才能なんてない
中途半端に評価されて
中途半端に消えていく
人並み以上に努力しているとは言えないから
何も言い返せない。平凡な人間。
だから、平凡なことを書くことにしたの
私にとって平凡で、それでいて精一杯気持ち悪いもの
精一杯詩的で、精一杯詩にものぐるいなもの
一生をかけて、詩ぬんだって
きっと大して評価されない
きっと大して好きにならない
それでもあなたの時間をいただけたのなら
これ以上幸せなことはない
ひとひら
綺麗とか、美しいとか、数あれど
可憐なものは、総じてひとひら
一輪の花にもなれやしなくて
一厘の先にもありはしない
(それはそれで可憐だけどね)
何処までも先を行く特急は
触れることの出来ない速度で
自由席の前から5列目
窓際のすぐ右隣に、ひとひら
青春だとか、赤の他人だとか、
そう言うのじゃなくて
唯唯可憐な、一瞬のひとひら
元気かな
夜行バスか高速バスかも知らない足で
帰ってみることにしたよ
もう覚えてないだろうけど
エゴの為だけに帰ってみたよ
01Aの窓側の席
目の前には暗闇と灯り
白線は途切れ途切れで
眠くなる
隣にあの人の感触がした
幻肢
窓際に寄りかかるみたいに
あの人に
昔の話
もうなくなった市営バスの話
なくなって、忘れてしまったあの夏の話
いつか語れたらいいなと
いつか聞いてくれたらいいなと
こどもみたいに、わがままに
ただそれだけだったんだ
ただそれだけ…
……
元気でいてくれてるだけで、
それ以外は望みもしないんだ
見知らぬ土地を走るバスは
私の想いごときっと