心だけ、逃避行
風鈴を飾りたいの
からんからんって音がして
でもけど乾いた音じゃない
みずみずしい音を聞きたいの
ほら、蝉の声もそう
ミンミンミンって五月蝿いけど
鳴かない夏も、うざったいじゃん
夏の音を聞きたいの
それでも風鈴はうるさくて
ベランダなんかに吊るせない
音のない蒸し暑いワンルーム
きっとここは隔離施設
空は原因不明のホワイトノイズ
世界は終わりを迎えちゃった
きっと最期はラッパが鳴る
そんな幻聴で夏を旅するの
嗚呼、風鈴がぶらさがる
嗚呼、夏の音を軋ませて
どこにも行かないで
通知のバイブが心臓まで響いて
早鐘の合間を鋭く刺して
さらに胸がきゅっとして
苦しい深夜 あなたの返事待ち
いつも時間を空けて返すから
スマホを触る片腕だけ起きてる
力無い細目で低充電の薄暗くなる画面を慌ててタップ
できるかできないか 意識がちらつく
吐きそうなほどネオンなのに
飲みたいほど血液が回るの
明日は平日って知ってるけど
もう少しこのまま ふりをさせてよ
雨音に包まれて
図書館も
傘の中も
あなたとだけの思い出
捲る音と
歩く音と
私たちだけの声
雨音に包まれて
追憶は五感全てにノイズをかける
忘れてしまうほど些細な日々を
私はトラウマのように、鮮明に
Sunrise
寂しさを太陽で埋めつくして
できないんでしょ、なら最初からしないで
そういうのは月の十八番なの
あつくならないで視界から消えて
夜どこに行くか分かっているはずなのに
"どこかへ"消えて欲しいと思う矛盾
それで言ったら月だって
見ていないのに寄り添いたいんでしょ
ほんとにそんな想像したことないくせに
フレアが無い分、実物を想像できるからかな
あれに寄り添いたいとは思わないもん
穏やかにベッドに身を預けて
海にもぐる苦しい感覚に欲求を満たしながら
どうせ来る朝を朝ぼらけに感じるの
不幸という空気を毛布で保温しながら
どうせ来る朝を嫌いなふりするの
どうしても…
書ける時しか書けやしない
言の葉を作る木に風が
ちょうどよく吹いてくれないから
いつも嫌な ばかり
かける言葉が出てきてくれない
人生をかけて愛したはずなのに
きっと
かけるためのものもなくなって
私は次に何を書けばいいの?
その答えはこれからあるとも言えるし
今までの中にしかないとも言えるし
次を無くすための書け事だとも言えるんだろうね
韻が逆に追う方になった自由律の詩
賢ぶるヒューマノイドのような言葉も飽きてきた頃
流石にもう出てこないと思った感情が
ふとした夜に夢遊する
ただただ好きなだけだったのになあ
何年経っても…何十年経っても……