秋恋
落ち葉より先に風の色で気づく
秋恋の訪れ
私はこの季節が好き
季節を掴める気がするから
大きく腕を広げて、胸に閉じて
空気をいっぱい掴み取るの
心做しか涼しくて
なにか掴めた感覚がして
あともう少しだけ夏服がいいの
もう少しだけ、この風に恋していたいから
静寂の中心で
これは夜の涼しさではない
24℃に設定したエアコンは何故か静か
目ではなく、頭が眠いとナースコール
音はならない
夏のタオルケットはまだ必要?
去年買って使い切らなかったココアは手前の棚?
夕焼けを恋しく思う時期が来ても
私の隣に座って目線を合わせる人はいない
いつでも妄想できるんだけどな
左の耳元にいる感覚はあるんだけどな
音がしないから仕方がない
私は冬の一般兵の、台風の目
moonlight
通話を繋げた音が波のようだった
押して引いてを繰り返すノイズ音で
真夜中に重い瞼を開けて
月明かりを見る時と同じだった
ここに一人。私。
充電コードが生きてることを確認してから
手元のリモコンで電気を消す
夜を消す光をスワイプして「雨 月 フリーbgm」
月の妖精が踊るんだ
ここに独り。私。
ねえ、お願い月の人。
この光が、母なる地にのみ照らしているのだと、
そう思わせて。
今日だけ許して
神様、私は最低な人なんです。
反省文というものを一度も書いたことがなく。
今までを楽に生きてきてしまいました。
それは決して優等生だったわけでなく。
ただふりが上手いというだけでした。
ただ優しく振る舞うのが上手だったんです。
ただ人に強く当たるのが下手だっただけなんです。
それだけで多くの人を不幸にさせました。
たくさんの人から愛をもらいました。
その愛を、ナイフの方にズタズタに全て壊しました。
きっと私のことを息を止めるほど恨んでいます。
根も葉もある罪を。
だから私は終わりたかったんです。
2階の窓というには高く、白い光が差してたあの場所から。
翼を授かったのだと嘯かれたかったのです。
でもあの子はーーあの人は、それを祝福と言いました。
神様の祝福だと言って、私を救ってくれました。
愛してくれました。
恋を、しました。
人生を一度救ってくれたあの人に。
人生をかけて愛を返すことにしました。
もうあの頃には戻れないけれど。
もう止まれないけれど。
……もう、動きすらしないけど。
もう、詩すら書かなくなるほど私を恨んでいるけど。
返すのが、私の愛というナイフなんだ。
それが私の、人生をかけた一振りだから。
だからお願い。私をこの神の中だけで終わらせて。
詩で終わらせて。誰か。
泡になりたい
自転車で帰るそこの君
夏の空を見てごらん
サイダーの音が聞こえてこない?
少しだけ吸い込まれる気がしない?
私は不思議ちゃんになりたかったからさ
どうしてもそんな気になっちゃって
そんなことを思っちゃって
空に溶けたいなぁって、思っちゃうの
シャボン玉よりも高い空
波が木霊する雲の泡
きっといつかは消えるのに
写真で動画で残してくれる
便利な世の中になっちゃったね
自転車を漕いで坂を上る
泡になりたい世の中になっちゃったね
自転車を漕いで夏を上る