ひとひら
綺麗とか、美しいとか、数あれど
可憐なものは、総じてひとひら
一輪の花にもなれやしなくて
一厘の先にもありはしない
(それはそれで可憐だけどね)
何処までも先を行く特急は
触れることの出来ない速度で
自由席の前から5列目
窓際のすぐ右隣に、ひとひら
青春だとか、赤の他人だとか、
そう言うのじゃなくて
唯唯可憐な、一瞬のひとひら
元気かな
夜行バスか高速バスかも知らない足で
帰ってみることにしたよ
もう覚えてないだろうけど
エゴの為だけに帰ってみたよ
01Aの窓側の席
目の前には暗闇と灯り
白線は途切れ途切れで
眠くなる
隣にあの人の感触がした
幻肢
窓際に寄りかかるみたいに
あの人に
昔の話
もうなくなった市営バスの話
なくなって、忘れてしまったあの夏の話
いつか語れたらいいなと
いつか聞いてくれたらいいなと
こどもみたいに、わがままに
ただそれだけだったんだ
ただそれだけ…
……
元気でいてくれてるだけで、
それ以外は望みもしないんだ
見知らぬ土地を走るバスは
私の想いごときっと
フラワー
帰ったら、扉に花が活けてあったの。
ドアノブに巻き付けるように、添え書きと共に。
「ご卒業おめでとうございます」
綺麗な花、ではあったの。
でも全くお世話になってない人で。
全くお世話したことのない人で。
花言葉を知った恋敵のように、全てが造花に見えて。
綺麗なはずなのに、どこかこの詩みたいにガタガタ。
だから、ペットボトルに活けることにしたの。
真ん中半分チョキチョキして。
添え書きはクリップで止めてあげて。
最後に写真を撮って完成。
添え書きはすぐ捨てちゃった。
もう1枚写真を撮って、嫌いで好きな子に送った。
とっても気持ち悪い。
綺麗なのに、どこもかしこも気持ち悪い。
言の葉すらない花なのにね。
言の葉を持った人なのにね。
風が運ぶもの
タンブルウィードの匂いがする
深海の都会に輝くビルのネオン
複雑怪奇な言葉だらけで
いつの間にか色が消えていた
幻覚幻聴ご上等
今が夢の蜃気楼だとしても
きっとその霧は風になる
凪
いつでも君を運んであげるよ
君が本当に望むのなら
いつでも君を運んであげるよ
ここじゃない場所なら、どこへでも
question
先生、教えてくださらない?
私は何に迷っているの?
だってなんにも困ってない
ただ、行きたい道の先が崖なだけじゃないですか
先生、教えてくださらない?
どうしてそんなに話したがるの?
人が一人墜ちることを社会は許容しているのに
どうして教養はそれを許さないのですか
どうして無関心でないのですか
私が迷子ではないからですか
私が迷えば存分に見限れて
この遺書もフィクションに堕ちるからですか
それなら、ずっと子どもでいたかったです
「question」なんて言葉を使えない
白兎を観ないアリスになりたかったです