キャンドル
その灯台は、どうやら探し物をしているらしい
小さな浜辺に腰掛ける少女は、不思議な笑みを零した
町外れの夕暮れは色鮮やかで、色褪せなくて
車に映るレンズフレアが、波を焦がした
「ねえ、このまま旅に出ない?」
小さな音と光が、まるでカタルシスのようだった
「ここじゃないどこかに行ってみたいの」
逃避を求めた愛、しかしその眼には煌めきが見えた
ああ、なんてアンビバレンス
あの子に灯りなんていらないんだ
ああ、なんてアンビバレンス
あの子に灯りなんていらないんだ
秋晴れ
撫でられたい
秋風の香りが髪を凪いで
私の心にまで
心地良く
晴れわたる空と雲と鳥と
石畳と木の葉の絨毯と
私しか見ないあの人の手に
撫でられたい
大事にしたい
特に大きなことはしてこなかった
誇れるようなことなんてなかった
それでも
緊張はしてくれる
心臓が脈打って、体全身が震えている
ああ、良かった
僕は僕を、頑張ってるって思っているんだ
こういうとこだけでも、僕を大事にしたいな
胸の鼓動
好きな鼓動なんて1度もない
生きていることに好き嫌いなんてなくて
鼓動はずっと意味なく騒いで
私を弱く苦しくする
もっと
もっと
もっと強く
もっともっともっともっともっともっともっともっと
強く強く強く
苦しくなりたい
命の灯火なんか比にならないくらい
愛を超えた感情を持って
幻を掴みたい
不完全な僕
その日から僕は、顔を洗い始めることにした。
目の前に映る自分が、どれほどのものか知りたくて。
月明かりが照らす光だけじゃ、
完璧に見ることが出来なかったから。
その日から僕も、顔を洗い始めることにした。
目の前に映る、鏡が汚れているのか知りたくて。
磨かれていないのがどちらなのか、
どちらか完璧か分からなかったから。
でも、もし。
鏡に映る自分が、そもそも「自分」じゃなくて、
「鏡に映る自分」以外の何物でもなかったら、
僕の信じた完璧って、一体何だったんだろ