貴方のように立派になるには、どうしたらいいですか?
若い芽が純真にそう訪ねてくる。
しかし、どうしても上手いこと言葉は出てこない。
目線の下にある双葉が風にそよそよ、と揺れている。
「あぁ。とりあえず、少し離れたところでゆっくり過ごすといい。」
陽の当たるところで、のびのびと育ってくれ。
私の傍ではなくてね。
いつまでも。
『1000年先も』
私を忘れないで。
あの花は、無惨にも川を流れゆく恋人に投げられたっていう逸話を元に名付けられたらしい。
そんな寂しいことに使わないでよ。
ただそこに咲いて、枯れて、また咲いて、
繰り返していく。
でも、
僕がここに生きているってことは、覚えていて。
『勿忘草』
1番遠くまで靴を飛ばせた人が優勝ね。
人気のあの子が楽しげに言うのを、僕はすこし離れた、1番後ろで聞いている。
先生がここにいたら、そんな危ない遊びはやめなさいっていつもの狐顔で言うんだろうな。
次々と2個ずつ宙を舞う鮮やかな魚、鳥、あれは…蛙みたいだ。
勢いをつけて、えいっ。
あ。
僕の魚は元いた場所に帰りたかったらしい。
隣の子に苦笑いを向けようにも、透明人間の顔の位置は分からないや。
『ブランコ』
そこに音はない。
交差したり並行したり、共にしたかもしれない影もない。
寒い、暑い、じっとり、かさかさ。
ひ、みず、こおり、もり、つち。どこだろうか。
そこまで考えたけれど。
硬く閉じた目蓋を開いて。
俯いた顔を上げて。
さぁ、違うルートを探そうか。
『旅路の果てに』
さらさら、ひんやり。
さらさら、さらさら。
身を任せて其の儘に。色はなく、全てを運ぶ。
昔から人を、物を、言葉や気持ちすら運んでいたらしい。
私も真似をしてみたりして。
はじめまして。
あなたはどんな人ですか?
返事をくれたりするのでしょうか。
私の代わりに、これを送るだけで我慢します。
読んでくれたあなたへ。
今どんな気持ちでしょうか。後悔していたら捨ててください。
拾ってよかったと思われたなら、私と少しお話をしましょう。