桜月夜

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10/8/2024, 4:13:56 AM

   :力を込めて

これから任務を遂行する
初めての緊張に体が震える
大丈夫、きっとうまく行く
私にできないことなどない

包丁を逆手に持ち振り上げる
握りしめる手に力が込められる

「あっ、あなた、何をする気なの…」

眼光鋭く声を放つ

「キャベツの千切りです」

一瞬沈黙が走る

「そう…なのね…、わかったからいったん
 包丁を下に置きましょうか…」

私は静かに指示に従った

「キャベツはそのままでいいから…そうね
 玉ねぎの皮を剥いてくれるかしら…」

新たな任務がきた

「はい、お任せください」

私にできないことなどない
少し悪戦苦闘したが…うん、完璧だ

「えぇ~、こっ、これは…らっきょう?」

「義母さんったら、玉ねぎですよ
 もしかして、もう少し剥いたほうが
 よかったですか?」

「いえ、もう十分よ、ありがとう…」

義母が笑顔を浮かべている
心なしか体が小刻みに震えているが
大丈夫、喜んでいる

任務完了

そう、私にできないことなど、ない


                 桜月夜

10/6/2024, 12:10:47 PM

  :過ぎた日の想い出

妻の愛した深紅のバラが
今年も美しく咲いた

朝露がベルベットの上に丸みをおび
艶やかな光を纏っている

妻が愛したこの一時を
ちゃんと見ているだろうか…

私を置いて逝ってしまった君は
今でも心の中で微笑んでいる

これからもずっと
愛しているよ…


                 桜月夜