終わらせないで
「あれ、りなちゃんの動画更新されてる。今週ペース早いな。嬉しい。」
私の大好きな動画配信者りなちゃん。登録者数千人の頃から見てて最古参と言っていいと思う。かわいくて癒される動画を出してくれるし、最古参の私にはDMも返信してくれて優しくて本当大好き。
動画更新ありがとう!最近ペース早くて嬉しい!でも無理しないでね!
「ふう...今日も一コメ取れた。コメ返も貰っちゃったし、後でお礼のDM送ろ。」
昨日のDMには返信が無かった。どうしたのかな、忙しくて返せなかったのかな。心配だな
返信を気にしてアプリを開いては閉じてを繰り返してしまう。
ピロンッ
「うわっ!びっくりした...りなちゃんの投稿だ。え、今日も動画出るんだ。ん?大事なお知らせ?」
大事なお知らせってなんだろう。午後のやるべきことはほとんど手につかなかった。時計を何度も確認してしまう。
ついに動画が出る時間になった。震える指を無視して画面を押す。画面に現れたのはりなちゃん。と登録者50万人越えのイケメンインフルエンサーだった。
私の動揺を無視するようにりなちゃんが口を開く。
「突然のお知らせですみません。りなはこの個人チャンネルをやめて彼とカップルチャンネルを作ることになりました!あっちのアカウントでも応援していただけると嬉しいです!」
カップルチャンネル?なに?理解できない。なに。
りなちゃん、居なくなっちゃうの。もうコメ返もハートもDMの返信もしてくれないの?
この男はだれ?りなちゃん、この男のものになっちゃったの、私のりなちゃんを奪わないで、終わらせないで、終わらせないで。お願い。まだここにいて。
愛情
きみの見る世界が美しいものであればいい。
美しい音を聞いて柔らかいものに触れて、パンケーキのことだけ考えていて欲しい。
たとえ私がいなくなっても幸せになって欲しい。
いつもきみのことを祈っている。
微熱
熱に侵されていた。今ならわかる。彼が世界一かっこよかった。誰かに取られてしまうのではないかと常に気を張っていた。彼の頼みはなんでも聞いた。予定も行きたい場所も合わせた。
「今日、俺んちこない?笑」
熱が引いた。なーんだただの男じゃん。
太陽の下
今日髪を染めてきた。黒もいいねって褒めてくれた。違うよ。ブルーブラックだよ。多分あなたはずっと気付かないままなんだろうな。