『月に願いを』#7
いつかの夏、君が流れ星に祈る姿を見た。何を願ったのかはわからないけれど、君が静かに祈る姿を見てなんだかすごいことをしているように感じたのを覚えている。
「人は死んじゃったらお星さまになるんだよ。お星さまになってみんなを照らしながら見守るんだよ。」
祈り終えた君が真っ直ぐ僕を見てそう教えてくれた。君が言うのならきっとそうなのだろう。だとしたらあのときの君は死者に祈っていたのだろうか。
「私が死んじゃったら貴方は私のお星さま見つけてくれる?」
君の問いに僕は大きく頷いていた。君ならきっと月のようにどんな星より明るく照らしてくれて、ずっと見守ってくれるだろうと信じている。
もし、君が僕より先に居なくなってしまったら君はきっとお月さまになるだろうから、僕はお月さまにお祈りするよ。
『逃れられない』#6
諦めきれなかった。誰の味方もしきれなかった。良くも悪くも優柔不断だった。あぁ強くなれたらな。いつも迷って失敗して己の弱さに嘆いて責任転嫁して逃げるだけ。君のほうが強かに生きてるよ。僕の親は毎日喧嘩をしていた。君ならきっと仲裁をしたりどちらが悪いのか見極めて正しい判断ができたのだろう。僕にはできなかった。どちらの味方も敵にもなれずに逃げ出した。でも逃げた癖に気になってそっと遠くから見たくなる時がある。とても無責任で弱くて逃げ回ってばっかりだ。それでも僕のことを見捨てずに何度も追いかけてくれた人が1人だけいる。君は昔から鬼ごっこが好きだったからね。やっぱり君からは逃げられないや。
『真夜中』#5
みんなが眠ってるちょっとだけ秘密の時間。起きちゃったから仕方ない。いつもは騒がしい部屋もしんと静まり返って、別の家みたい。外で歌う虫の声がよく聴こえる。僕もあの虫みたいに人が落ち着くような声で歌えるようになりたいな、なんて。なんの夢だったかもう忘れちゃったけどなんとなくこわい夢を見て起きちゃった気がする。夜中に目が覚めたら君はどうするかな。君は頭が良いから眠くなるまで本を読むのかな。お勉強するのかな。僕はどっちも1ページにすら満たずに飽きちゃいそう。
そういえば、この前ひとりでお散歩した時に綺麗な花を見つけたんだ。君にあげたかったけど花は摘んだらすぐ枯れちゃうから押し花のしおりを作ったんだった。君の大好きな本にこっそりしおりを挟んで返そうかな。この花はね、君とおんなじ名前の花なんだよ。
真夜中の小さないたずら、君は気に入ってくれるといいな。
『子供のままで』#4
きっと、ぼくは君に釣り合わない。神様だってそう言うはずだ。だってこんなに綺麗で、こんなに真っ直ぐで。お姫様みたいな君のとなりをぼくは歩けない。歩いちゃいけない。
でも、ぼくたちだってまだ子供だ。恋愛なんてわからなくてもいい歳だ。わからないフリしても許してくれるよね。ずっと子供のままでい居たいけれどそうもいかない。だから、今だけ。
寝ている君の頬にそっと口づけた。
『君の目を見つめると』#3
きみのめは ほうせきみたいなんだ
きっと なによりもきらきらしてる
ぼくね、きみみたいになりたいな
おほしさまみたいにきらきらしための やさしいこ
ぼくがきみのいちばんぼしになりたいな
きっと きっとなれるよね