ひそひそ、ひそひそ。
時折そんな小さなささやき声が聞こえるようになったのはいつからだったかな。
最初は遠くの声よろしく小さな小さな……本当に聞き取れるかどうかというレベルだったのに、今では耳元で内緒話されてるかのようにしっかりはっきり聞こえる。
と言っても聞こえるのは本当に「ひそひそ」だけ。
他の言葉は聞いたことがない。
でもなんで私にこんな声が聞こえるのかな。私の幻聴なのかな?
ひそひそオンリーの幻聴なんて聞いたことないけど。
もし声の主がいるとしたら誰なんだろう。
そしてなぜひそひそだけなんだろう?
……謎は尽きないなあ。
まあ解明する手段もないからこの謎は迷宮入り確定だろうけどね。
……気にはなるけど。
春に恋するから春恋。
では夏は夏恋、秋は秋恋、冬は冬恋になるのだろう。
……こうして羅列すると人の名前みたいだなあと思うが、実際にいるのだろうか。
もしいたらとても素敵な名前だから誇っていいと伝えたい。
まあそれはさておき、恋は春に限らずいつでもしていいと思う。
春は恋の季節らしいが、恋をする瞬間というのは季節や時間を問わずに突然やってくるものだ。
人を好きになるのに理由なんていらないのだから。
私の将来はどうなっているのだろうとは思うが、未来のことはそれほど考えたくない。
私の未来図は白紙。
その方が驚きがあって楽しい……と思う。
ひらひらと桜の花びらたちが落ちてくる。
確かこれを地面に落ちる前に五枚掴んだら願いが叶うとか、叶わないとか。
ものは試しにやってみようとチャレンジしてみたけどこれが案外難しい。
まあ願掛けなんてこんなもんだ。と諦めたその瞬間、
ひとひらの花弁が目の前にひらりと落ちてきてそのまま地面に落ちた。
とっさに手を出したら掴めたかなあ。チャンスを逃してしまったかなあ。
とついタラレバを考えてしまうが過去を振り返ってもしょーがない。
むしろ私らしくていいじゃない。
そう、現状維持でいいのだ。
まだ見ぬ景色を目指して僕たちは旅をしている。
いろんなところに行って、いろんな人と出会っていたら、なぜかそこそこな有名人にもなってしまったけど僕たちの本質は旅人ということに変わりはない。
僕の片割れでもある姉は新しい風景を求めて常に探究心と好奇心をフル稼働させているから、一つの町に長い間留まるなんてことは絶対にしない。
僕にはそれほどの気概はないけど、姉のそういう姿勢はカッコいいなと思う。
……まあ、そのせいでほとんど野宿なのは考えものだけどね。
さて次はどこに行くんだろう?
目的地も道も決めるのは姉次第。
新しい風景もまだ見ぬ景色もその全てを姉と共に見てこの世界を知りつくしていこう。