あゆむ

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5/7/2023, 10:31:41 AM

自分には、恋愛感情というものがないらしい。
そう気がついたのは、小3のとき。

「あいつ、あんたのこと好きらしいよ」

その言葉に、凄まじい嫌悪感を覚えた。

「ね、どう思ってんの?」

それ以上続けてほしくなかった。前日まで親友だと思ってふざけあっていた子にも、その子の気持ちを伝えてきた子にも、裏切られた気がした。

とっさに言葉が出てこない。
喉が一気に狭まってしまったようで、呼吸さえもうまくできなかった。

できてしまった沈黙。なんとなく気まずい空気。

それを誤魔化すために、教室の敷居に足をひっかけた。
荷物の重みと膝の痛み。
なかなか大きな音がして、皆が驚いて周りに集まってくる。中には、今の話題の子もいた。


初恋。
それは、自分にとっては必要の無いもの。
あってはならないもの。
どれだけ年を重ねても、きっとそれは変わらない。
なぜ、こんなにも気持ちが悪いのか。
なぜ、皆はそれを楽しめるのか。

自分にはわからない。わかりたいとも、あまり思わない。
ただ適当に笑って、言うだけだ。

「なんとも思ってないよ?友達だから。」

5/7/2023, 4:17:53 AM


ゆっくりと目を開ける。
雨。
全てを洗い流す雨。
服と髪が肌に張り付いて気持ち悪い。
それでも、この場所にいたい。
家の3階のバルコニー。世界で一番好きな場所。
世界で唯一落ち着ける場所。

ただひたすら、雨に打たれる。雨の音で満たされる。雑音は、雨が消し去ってくれる。
その雨は、まるで全てを洗い流すために降っているかのようで。いっそ世界が終わってしまったらと考える。
もしもこの雨で、明日世界がなくなるのだとしたら。私は、その瞬間をこの目で見たい。憎らしい世界が大好きな雨で終わっていく様を、最後の最後まで、この目で見ていたい。

きっとそれは、今までにないほど感動的な光景なのだろう。