庭のイタドリを手折り、下処理をする。
炒めたり、煮たり、今年はジャムにも挑戦してみよう。
足元に咲いたクローバーを避けて、庭に咲いているコスモスを摘んで花瓶に生ける。
きっとこの秋最後のコスモスだ。
向こうに咲いたカラムシたちはもう少ししたら繊維にする。
次の織物は何色に染めようか。
今年の胡桃はどれも大きい。
全て拾わずに必要な分だけ。
あとは動物と森に。
あけびのツルはどこまでも長い。
木の実は甘く熟し、懐かしさを感じる味だった。
あとは、…あぁ、そうだ。
山葡萄はまだ残っているかな。
染め物、ジャムに酒、ツルや葉をお茶にもできる。
今年も忙しい、森と共に冬支度だ。
題__冬支度__
視界が霞む。
水の中、息を吐く。
泡沫になって消える言葉。
伝わらない、聞こえない。
ただ、ただ沈む。
もし、この声がもう一度と届くなら。
最後にもう一度…声にできたなら。
あなたに伝えたい。
私が鯨なら、伝えられただろうか。
甲高く、切なく鳴くあの声で。最後にあの声で。
『私を忘れて。』
題___最後の声___
「ねぇ、秘密だよ」
誰がいう。
「これ秘密だから、君だけに」
あぁ、また一人。
「絶対教えちゃダメだよ、秘密だから」
こっちも。
「あの子は耳も聞こえないし目も見えない。だからなにしてもいいんだって。」
「あの子はなにをされてもわからない。だから失敗作なんだって」
なにも聞こえない、見えやしない。
唯一聞こえる、誰かの秘密。
喋れないから誰にも伝えられない、伝えない。
私だけの"誰も知らない秘密"
__誰も知らない秘密__
海の中から見える景色。
深海写真家という職業をやっていると、海のことはわかっても外、いわば『空模様』なんてものは気にならない。
晴れていればいい。
ただそれだけ。
ふと水中の中で顔を上げる。
「あぁ…、綺麗だ。」
空が、夜空の星月が、波が新しい『空模様』を描いていた。
それは、『空のこと』なんて気にも止めなかった私を嘲笑うかのようにただただ美しかった。
__空模様__
誰もが寝静まり、波の音がよく響く。
少しむせかえるほどの潮の香り。
足元を照らすのはあまりにも儚げな月の光のみ。
砂浜を歩き、足跡を一つひとつと残してゆく。
あぁ、これだからやめられない。
目の前に広がるのは、月はもちろん星の輝きさえも反射する海。
『夜の海』だ。
__夜の海__