落ちていく。
落ちている。
気が付いた瞬間、地に叩き付けられた。
激しい痛み。なのに気絶もせず、死にもしない。
痛いと泣き喚く。
助けてと叫ぶ。
悶え苦しみ、呻き藻掻く。
けれど、ふと聞こえた声が、それを一蹴する。
「その程度の高さから落ちたくらいで何だ。情けない」
「同じ高さから落ちた他の奴は誰も泣かなかった」
「もっと高い所から落ちた奴だっているのに」
一人の声だった気もするし、大勢の声だった気もする。
反射的に確かめようとしたけれど、出来なかった。
確かめる前に、抗議する前に、また体が浮き、落下を始めたから。
パニックになり、喉が裂けんばかりに悲鳴を上げながら落ちて、やがてまた、地に叩き付けられた。
明らかにさっきより激しい衝撃。
多分、高さも先程の比ではない。
それでもやはり、気絶もせず、死にもしない。
何故、どうして。
痛い。
痛い。痛い痛い痛い痛い痛い……!
どうして、こんな……
「甘えるな」
「泣き喚く暇もなく死んだ奴もいるんだぞ」
「そんな奴らに向かって助けてと叫べるか? 生きてるだけでも有難いと思え」
--そうしてまた、声が響く。
何とか這い上がろうとしても、助けを求めて手を伸ばしても、天井は遥か高く、引き上げてくれる手もなく。
痛い。
たったそれだけの言葉さえ、届く事も受け取って貰える事もなく。
己を賢者だと妄信する愚者達よ。
あなた方は一体
何処まで落ちれば満足ですか?
何処まで落とせば気が済みますか?
あの頃想像もつかなかった未来にも
これから先の想像もつかない未来にも
分かっている事実は一つだけ。
貴方とはもう二度と、言葉を交わせないということ。
でも今日、この日だけ、どうか、貴方だけを想うことを許して欲しい。
だって今日は、貴方がこの世に産まれたとても尊い日。
もう二度と伝えられないけれど、せめて、この胸の奥だけでそっと呟くことを、許して欲しい。
貴方が生まれた、そのとても素晴らしい奇跡に感謝を。
これから先の未来
貴方が幸福と優しさに満ちた世界で生きていてくれますように。
今日この日、未来に願うことは、それだけ。
好きな本について語り合った日々
忘れてないよ
だって私にとっては、今でも大切な大切な思い出だもの。
言葉を交わせなくなって三年。
貴方は
今日はどんな本を読んでいるのかしら。
叶うことならもう一度……
貴方と本について、物語について、語り合いたいです。
おかえりなさい。
今日のお昼は何を食べた?
美味しかった?
今日はどんな一日だった?
きつかった?
辛かった?
楽しかった?
嬉しい事が一つでもあった?
どうしてかしら。
今すごく。
そんなとりとめのない話を貴方としたいの。
所詮人間なんて
体と体が繋がればそれでいいくせに
なぜ心と心まで
無理矢理繋げようとするの?