太陽は一つなのに
その光は幾億の人間を等しく照らす
幸せそうに笑い合う恋人達
楽しそうに笑う友人達
穏やかに笑う家族達
けれど太陽の下に居るのは
幸福を手にした者だけではないのだということを
人は知っているのに忘れているんだろう
太陽は一つだけど
その光は幾億の感情を等しく枯らす
幸せな恋人達と擦れ違ったのは、俯く誰か
楽しそうな友人達と擦れ違ったのは、涙する誰か
穏やかな家族達と擦れ違ったのは、殺意抱く誰か
理解出来ず
相容れぬ者同士が当たり前に擦れ違い
それでも変わらぬ世界の巡り
太陽の下では今日も
幾億の命が心を燃やして
太陽の下では今日も
幾億の命が枯れ果てる
さあ貴方は
今日はどんな顔をして
どんな感情を抱いて
太陽の下を歩くのでしょう
着ないからあげる
そう言って渡されたセーターは私の宝物だった
貴方の香りに包まれているみたいで
袖を通す度に嬉しくてほっとした
長い年月が過ぎて
そのセーターはもう着られなくなり
ボロボロになり
思い出と共に過去の物となり
やがてこの手から
この部屋から姿を消した
でも忘れてないの
私は今も
貴方の温もりを
セーターではなかったけれど
私も貴方に贈ったことがある
今となってはそれも
きっと貴方の手から離れているだろうけれど
私のぬくもりと、思い出と贈り物が
貴方を不快にさせていないと、いいなぁ……
落ちていく
落ちていく
底のない沼の中
厭う私の手を無理に引いて
足を踏み込ませて
落ちていく
落ちていく
自らも落ちたことがあるくせに
この沼の中に行くしかない、と
虚ろながらも狂気を宿した目をして
無理矢理私の背を押して
沼に足を踏み込ませて
落ちていく
落ちていく
違う
ここに落ちるしかない、なんて
そんなこと絶対にないのに
落ちていく
落ちていく
落ちていく
落ちていく
私を無理矢理連れてきた者達は
落ちていく私を冷めた目で見下ろして
「だってその中に行くしかないのよ」
違う道を示した私にそう言う
ただ迂回すればいい
迂回する道はある
そう、言っているのに
落ちていく
落ちていく
落ちていく
落ちていく
落ちていく
落ちていく
その契りを交わした瞬間
夢を失い
希望を失い
心を失い
尊厳を失い
信頼を失い
そんな契りを交わすことに
一体どんな価値があるというの?
貴方が私にくれた言葉。
顔も名前も知らない、画面の中で、画面の向こうで。
交わしたものは言葉だけ。
その言葉すら、もう今は交わすことはないけれど。
貴方が私にくれたもの。
全部私の
大切な宝物。
それを胸に今日も私は
言葉を紡ぎます