【忘れたくても忘れられないもの】
昔々に使い倒したゲームのパスワード。
昔々に覚えた引っ越す前の家の電話番号。
昔々に投げつけられたトゲトゲ言葉。
忘れられたらいいのにね!
まだまだ新しいこと覚えなきゃいけないんだからさ。
記憶領域、少しでいいから空けとくれ。
「やわらかな光」と聞いて思い浮かべたもの。
乳白色、春、ぬるま湯、間接照明。
何となくぼんやりしていて、体温くらいの温度を持つもの。
イマイチはっきりイメージできないなと思いながら、車を降りたときに見えた月。
あ、これだ。ぴったりだ。
満月に近い太った月に薄く雲がかかっている。
私の「やわらかい光」は朧月。薄月。
*
じゃぁ、その反対は何だろうか。
かたい光?やわらかい影?
朧月に対しての名月。
メラメラ太陽。
影、陰、翳。
月影は光。
はて…
どんなに眼差し
鋭くしても
ただただ可愛い
ちびパンダ
*
ツリ目なのにタレ目に見えるパンダ
どのサイズでも可愛いけど子どもは特別可愛い
ざんぎり頭のあれと同じリズムになって落ち着いた
「鋭い眼差し」
「先輩、今期の目標書いたんでチェックお願いします」
はいよ、と作業の手を止めてくれる大ベテランのモチダ先輩。
途中まではうんうんと頷いていて、OKをもらえるかと思いきや、最後に質問という名の却下をくらう。
「タケダくん、売上目標が低いんじゃない?前期もっと売ったでしょ?」
「前期はたまたまラッキーが重なって売れただけなんですもん。また同じだけ売るなんて…」
チッチッチ、と古の仕草を見せる先輩。
さすが大ベテランだ。
「あのね、100万売りたかったら150万売る気でいくの。目標は高く高くが基本よ」
「えー」
「高くしすぎたら踏み倒せばいいんだから。ハードル走だってそうでしょう」
納得していいものか迷うな。
「じゃぁ先輩は前期どんな目標にしてたんですか?」
「…10kg痩せる」
え、そんなんアリなのか。
健康維持も仕事のうちってか。
確かに健診で引っかかってたもんな、メタボチェック。
「結果は?」
「……3kg」
「なるほど、3kg痩せるためには10kg痩せるつもりで」
「………増えた」
だよね!?そうだと思った。
モチダ先輩、相変わらずもっちもちだもん。
永久保存してほしいこのもちもち。
「えーと…踏み倒したんですね」
「やめて、そんな目で見ないで!」
先輩、ありがとうございます。
今なら強気で書けそうです。
目標は、
【高く高く】
「子供のように」
泣いたっていいじゃないか。
笑い転げたり、怒ったり。
理性は感情を消したりなんかしないんだから。
はしゃいだっていいじゃないか。
桜に花火に紅葉に雪に。
季節は感動を伴ってやってくるんだから。
子供を羨ましく思うな。
何者かに支配されるな。
大人だって自由に生きりゃいい。
と、思うのに。