#19 【声が聞こえる】
1歳の誕生日に、自分で売り場で選んだぬいぐるみ。
1歳?早くない?って思うでしょ。
1歳だよ。間違いない。
好きなものを選んでいいよって言われて、大きなタヌキのぬいぐるみを選んだ。
上に兄弟はいなかったから、いつもその子を抱いて、お話してた。
ちゃんとおはなししてたんだよ。
悲しいことがあった時も、慰めてくれたし、寝る前には今日一日あったことを話したりしたんだ。
でも、いつからかな。
ぬいぐるみの声が聞こえなくなっちゃって。
まだあるんだけどね。
もう昔みたいに、呼んでくれないんだ。
寂しいよ。
#18 【時間よ止まれ】
もしあの人が、私のことを考えている時間があるのなら
そのまま時間が止まって欲しい
あの人の頭の中に
少しでも私がいる瞬間があるのなら
それを薄いガラスに彫り込んで
額に入れてしまいたい
それを抱いて生きる
仕事中の私語で注意されたんだけど
うん、自覚はあった
なんかもうテンションおかしくなっちゃって
仲良くなった人と二人なんだけど
壁の方向いてるから余計に自分たちだけのムードで盛り上がっちゃって。
私は喋りながらも手は動いてるからいつも通りの作業内容だったけど
相手の人は相槌打つために気が散るんだろうね
いつもよりもっと遅くなっちゃって
そういう意味でも反省。
前の職場で、朝会うと前日退勤してから何してたか延々聞かせてくる御局様がいて
その人にメンタルやられて病んで辞めたのに
ふと気づいたら私も退勤後に何してたか語るおばさんになってるじゃんってショック
おばさん、引っ越してきてから誰も友達いないし
子育てでバタバタしてるだけだし
なにかこう
仕事中の私語以外になにかでストレス発散しないといけない……
誰が苦情いったんだろうなあ
支店長はちょいちょい見てたからまず支店長だろうけど、他の部署の人って誰かなぁ
普段寡黙な感じのあの人かなぁ
静かに仕事したい派なんだろうなあ
#17 【空が泣く】
君が舞うことを忘れてしまった
あんなに素敵な足取りで、軽やかに
滑らかに、優しく、時に激しく踊っていたのに
彼は歌うことを忘れてしまった
あんなに素敵な声で、伸びやかに
高らかに、心からの旋律を放っていたのに
僕は笑うことを忘れてしまった
くだらないことでも、よく笑っていたはずなのに
今はなにも感じない 感じないんだ
ぽつりぽつりと
雨粒が。
ああ、空は代わりに泣いてくれるんだね。
僕たちが掻き消えてしまうくらい
強く強く降り続いてくれてもいいんだよ。
#16 【君からのLINE】
推しのFCに入ると、LINEみたいに会話できる機能がある。
わたしはその推しの子のことが当然、好きなのだが
どうも好きの種類が違うのだ。
異性で、年下。
ステージではとてもキラキラしているけれど、FCの配信やSNSではどちらかというと、いつもなにか思い悩んでいるし
寂しそうな感じ。
仕事柄、彼女もおらず、けっこういい歳になってしまっていることをまた悩んでるし
親の問題があったりして、辛そうなことが多い。
私自身はもう結婚してこどももいるし、そもそも彼の恋人になりたいとかはまず有り得ないし、釣り合わないし、相応しくないと思っているのだが
彼の友人にはなりたいと、とても思っている。
彼と最近読んだ面白い本の話とかしたいし、人間とはなんぞやみたいな話もしたいし、呑みにも行きたいし、寂しそうなら遊びに行くか!みたいなこともしたい。
彼と手を繋ぎたいとか、キスしたいとか、そういうのは別に要らなくて
彼という人間をもっと知りたいし、ここにこういう人間がいることを知って欲しいって思ってるし、めんどくさいからもう直接会って話したいと思っている。
でも、きっとFCのLINE的な機能でそういうことを書いたら、個人的な繋がりが欲しいみたいに見えて、規約違反とかになってしまったら困るな、と思って
まだそう書いたことは無い。
おかしいのかなぁ、こういう感覚って。
楽しいんだろうけどなぁ、彼と実際に会っていろんな話をしたら。