雨が降るのかわからない曖昧な空。
厚い曇天は空一面を覆い、太陽の光は一切漏れ出てこない。
雨でも降ればきっと向こうは諦めがつくのだろうが、雨の気配は未だに感じられない。
−−−はあーあ、嫌だなあ。
私は玄関先でため息をつく。
体育が苦手な私は、体育祭が中止になってほしかった。
ダメ元で吊るした逆さのてるてる坊主は、中途半端にしか効かなかったのだろう。
紫陽花の花言葉は、移り気。
色が鮮やかに移り変わるから付けられたのだと言う。
人の心も、移ろうもの。
移ろう先に見えるものが良いものだけとは限らないけど。
その先を見据えて、未来を望むのなら、行く先々が紫陽花のように鮮やかであって欲しいな、と思う。
好き嫌い
大人になると味覚が鈍くなって、嫌いなものが少なくなるという。
子供の方が危機管理が高く、毒物を退けられると判断するならば、好き嫌いが多いことも許容できるのかな。
平日の午後、いつもの街はひっそりと穏やかに佇んでいる。
多くの人が当てはまる週休二日制の休日、つまり週末は常に人が溢れかえっているのに、平日になると途端に静かになる。
健康診断で合法的に平日半休をもぎ取った私は、せっかくだからこの街の一番人気の喫茶店で時間を潰すことにした。
単位制の大学生、暇を持て余してるご婦人、定年を超えたらしきご老人たちはいるものの、流れるジャズのBGMにふさわしい静かな時間が流れている。
慣れない注文にまごつきながらも、ようやくカフェモカを手に取り、一番広いソファに座り込む。
本屋も近くにあり、買った本を読むこともできるが、私は一週間前から積んでいた借りていた文庫本を鞄から取り出す。
それを読みながら、暖かな日差しに照らされて私はソファに身を埋めた。
やりたいこと
記録しておいてるはずなのに
いつのまにかやりたい気持ちは過ぎちゃってて
今では完全に重荷になっているものばかりだ
なんで私はこんなに気分屋なんだろう
確かにあの時はやりたかったことだったんだけどなぁ