保健室から香る紅茶の匂い
今日もこの匂いで安心できる。どこにも逃げ場のない学校で見つけた私の居場所。
考えてみれば難しかった。
缶の開け方も戸の閉め方も。
自分が持ってる最大限の力を込めても。
人との付き合い方もそうだ。
相手が考えてることにも気づけず気づかず自分が言いたいことだけ言って話を聞かない聞けない。
よく間違えるしよくケガするし。
考えてみればヒントはあったのに生きづらいのは病気が原因だったんだって小さい頃から人よりできないことが多くてイライラしてたし不甲斐なかった。でも理由が分かって安心した。
治療薬はないけれど、自分を責める事を辞めれた。何もかも病気のせいだって責任転換できる。それだけでも大丈夫だ。
この先も悩みは絶えないしイライラすることもあるだろう。それでも理由が必ずあってそれが見つかるまで生きておこう。これが私が見つけた治療薬。
あぁあの時こんなことあったねって言い合ってる時が何気に幸せなのかも。過ぎ去った日にも私たちを呼び戻してくれる。築いてきたこの人生捨てたもんじゃないかもね。
「すぐに死なないとダメですか?」眩しいくらいに光っている星のすぐ下で屋上から身を投げようとした僕にその女は言った。「どうせ死ぬならちょっと私と踊りませんか?」
は?何を言ってるんだ。どこのだれだかわからない女にそう言われ、言葉が出ない。理解のできない時間が数秒過ぎた時、飛び降りる寸前の場所までいたはずの自分がその女の目の前にいた。そしてまた沈黙が続く中、その女と真剣な瞳で向き合っていたのだ。惹きつけられる瞳に曇りはなかった。何が起きているのか分からないが、あの瞬間だけは死ぬことを忘れていた。今になってもあの瞬間が不思議でたまらない。思い出そうとしてもその後の記憶はなく気づけば屋上で朝を迎えていた。どう考えても夢のような話だが本当の話だ。間違いなくあの日誰かに助けられて今を生きている。
なんでもない日にふと感じる喪失感
目から全てを吸い取られたように一点を見つめ起き上がることすらできない感覚。それでも時間は進み現実を生きている。