8/30/2024, 4:18:42 PM
あなたのことが好きでした。
顔も声も仕草も、その少しキツイ香水の匂いも。
あなたは私をよく抱きしめてくれましたね。
そのたびに甘ったるい匂いが私の鼻を刺すものですから、本当は嫌だった。なんて…今更言っても仕方がないことですね。でも、好きでしたよ。なんだかんだ。
あなたはある日突然消えてしまった。
その少しキツくて甘ったるい匂いだけを残して。
あなたが置いていったあのTシャツ。あれ結構高かったのに。もったいないので、私が着ています。肌と布が擦れるたびにふわっとあなたの匂いが香って、涙が出るのはここだけの話です。
でも、最近そのTシャツからあなたの匂いがしないの。私が使う柔軟剤の匂いしかしないの。何でかな。あなたが私のなかで匂いとともにどんどん薄れていく。辛い。だなんて…柄にもなく弱音を吐いてしまいます。
早く帰ってきてください。あの匂いを連れて。もう一度抱きしめてください。もう嫌だなんて思わないから。
あなたのことを忘れたくても忘れられないんです。あなたがあんな香水使うから。匂い、覚えちゃったじゃないですか。
せめて、あなたの使っていたあの香水の名前を教えてください。今度探してみようと思っています。
作品No.1 2024.8.31 「香水」