お題[君と歩いた道]
あの木はあの日の桜かな?あんなに鮮やかなピンク色だったのに、今ではすっかり爽やかな緑だ。いやでも月日が経ったことを感じされられる。そんな景色を目の当たりにして気分が沈む。
「あの時に戻りたいな…」
お題[さあ行こう]
待ちに待った合格発表の日。自宅で見るのが怖くて、学校へ向かうことにした。
早めに向かったつもりだったが、道中何度もトイレへ行ったおかげで、着く頃には人でいっぱいになっていた。これではトイレへ行けないではないか!なんて気を逸らしながら、トイレの場所の確認をした。今は最重要事項だ。なんだ、近くにあるじゃないか。なんて安心したのは一瞬で、結果のことを考えるとお腹が猛烈に痛くなってしまう。さあ、俺は掲示板とトイレ、どちらに先に向かうべきだろうか__
お題[水たまりに映る空]
どんよりとした空気とは対称に、空はどこまでも澄んでいる。それがどうしようもなく恨めしい。キッと睨みつけたところで素知らぬ顔だ。精一杯の抵抗として、道にできた水たまりを1つ1つ踏んでいくことにした。水面に映る綺麗な青が歪んで、暗い泥に塗れていく。それがなんだか楽しくて、落ち込んでいたことなどどうでもよくなってしまった。
お題[恋か、愛か、それとも]
今日も目が合った。すぐ逸らされたけど。
「最近よく目が合うなぁ…」
彼女は数年前から通ってくれてる常連客だ。すっかり大人びたな。なんて思いながら見つめていると、何かを探している様子。この見渡しのいいカフェの店内で何を探すというのだろう。不思議に思った僕は、彼女に近付き声を掛けた。
「何かお探しですか?」
少し躊躇したあと不安そうな顔で、ここに来ると視線を感じることを打ち明けてくれた。恋人が行方不明になっていることも、捜査に進展がないことも。何年も彼女を見てきた僕には知らないことなんてなかった。もちろん恋人の行方も知っている。それでも、不安そうな彼女を見ていられなくて
「お家までお送りしますよ。僕がついています。」
なんて言ってしまった。やってしまった…と焦る僕とは裏腹に、彼女は嬉しそうな顔を見せてくれた。
やっとここまで漕ぎ着けた。
お題[約束だよ]
たまたま入ってしまった教室。あの子に目を取られている隙に、足早に去っていくスラックス。
揺れるスカートに、赤く染まる耳。
ここには2人きりなのに、あなたの目に私は映らないのね。
小指と小指が交わる。
自然と綻ぶ頬。
私には向けられることのない、その嬉しそうな笑顔に耐えきれなくなって、そっと目を逸らした。
「ごめんね」
そう呟く私に不思議そうな顔をする。
あぁ、どうかこの子に幸せを…