23時40分
歯磨きを終え、布団に入る前に机に向かう。
私にはルーティンがある。
それは毎晩、明日の目標を立てることだ。
どんなに小さくても構わない。
大好きな温かいミルクティーを飲むだとか
お気に入りの小説を読むだとか
好きなドラマを観るだとか
私にとっての明日の「お楽しみ」を書き出してみる。
日によって様々だ。
決してギラギラした眩しい太陽のような、大そうな目標ではない。
だけど私にとっては眩しい太陽なんかより、こっちの方がずっと心地良い。
小さな灯りをポツン、ポツン――
と照らしていく。
私にとって毎日の目標は、いわば道しるべのようなものだ。
小さくてふわふわしたその灯りは、
いつも私をそっと導いてくれる。
明日の自分が迷ってしまわないように。
たとえそれが小さな光であっても、その灯りさえあれば私は私らしくいられる。
だから今日もひとつ、またひとつ灯りを灯す。
明日へ繋げるために。
「明日への光」
星は綺麗だ
どれだけの時間が経っても、夜になるとまたそこに現れる。そして輝いている。
もしも星になれたら――
そう願ったことのある人もいるだろう。
しかし星になれたとして、その星は本当に輝くのだろうか。色や明るさは違えど、星は無数に存在する。
その中のひとつになったところで、誰かの記憶に残ることはあるのだろうか。
見上げた時にただの光る点になってしまわないだろうか。
それなら僕は星にならなくていい――
星になるより流れ星になりたい
流れ星は一瞬だ。流れたと気づいた頃には、すぐに夜空へ消えてしまう。
一瞬かもしれない。
それでも流れ星には、願いを込める人がたくさんいるはずだ。
一瞬で消えてしまうからこそ、
誰かに託され、託していかなければならない。
それは命も、きっと同じはずだ。
誰かの願いを託されるそんな存在になってみたい。
誰の目にも止まらないかもしれない。
それでもいい。
いつか誰かの役に立てるのなら。
「星になる」
チリンチリン♪
厨房から聞こえる小さなベルの音。
私はカフェが好きだ。
週末はよくSNSや雑誌で紹介されているカフェを探しては、カフェ巡りをしている。
今日は町外れにある小さなカフェに足を運んだ。
お店の名前は、「カフェ やすらぎの森」
この店は1階が厨房とレジ、2階が客席となっている。
店は小高い丘に位置しており、後ろには大きな森が広がっている。
木造りの構造に煙突までついていて、まさに森の小さなカフェだ。
レジや厨房のカウンターには、木彫りのフクロウやタヌキの置物が置いてあり、これがまた味を出している。
今日はミルクティーとモンブランのケーキセットを注文した。
このカフェの人気No.1らしい。
この店では料理が出来上がると、厨房からベルが鳴る。
そして店員さんが2階の客席まで運んでくれる仕組みになっているそうだ。
ベルが鳴るたびに、今か今かと胸が躍る。
客席には暖炉と全面ガラスの窓があり、窓からは山と平野が見渡せる。
暖炉の心地よい熱と、木造りの香りがふんわりと私を包み込む。この雰囲気がたまらなく好きだ。
チリンチリン♪
またベルが鳴る。
階段を上る足音が聞こえる。
目の前にミルクティーとモンブランがそっと置かれた。
「遠い鐘の音」
深夜0時19分。
1冊の小説を読み終え、ホッと息をつく。
あったかくて、切なくて、勇気をもらえる物語だった。
世の中にもこんな人がいる。
こんな素敵な人がいる。
そう思うと、また頑張ろうと思えてくる。
昔から小説を読み終えると、よくこういう気持ちになる。
いわゆる「余韻」というやつだ。
たとえそれが小説の中の架空の人物であったとしても――
こういう人になってみたい。
こんな風に振る舞ってみたい。
こんな風に笑ってみたい。
憧れは、私にとって生きる原動力だ。
映画やドラマでもよく感情移入をしてしまい、そのたびにどこからかやる気が湧いてくる。
今日も頑張ろうと思える。
もしかしたら私は、単純な人間なのかもしれない。
小説1冊で、ひとりで幼い子どもみたいにはしゃいでしまうのだから。
この気持ちを大事にしたい。
自然と笑みがこぼれ、ほかほかした気持ちを小説と一緒にそっと抱きしめる。
あったかい。
私よりも遥かに小さいはずのその本は、温かいもこもこのクッションのように感じた。
また素敵な1冊に出会えた。
忘れない1冊。
忘れたくない1冊。
いつか誰かにおすすめを聞かれたら、この小説を選ぼう。
期待と楽しみを胸に、またひとつ「ぬくもりの記憶」が増えた瞬間だった。
「ぬくもりの記憶」
これは、とある少年の話である。
まだ駆け出しの僕は、右も左もわからず、がむしゃらに生きていた。
その頃は、目の前のことをこなすので精一杯で、今みたいに先のことなんて考える余裕はなかった。
来る日も来る日も努力を重ねていた。
ストレスのせいか、食べ物が喉を通らず、戻してしまうこともあったのを覚えている。
そこまでして目指したいものがあった――と言えばそうなのだが、今思えば、あの頃の僕は自分自身の姿がまったく見えていなかった。
まるで色のない真っ白な雪原に、ひとり野放しにされたみたいだった。
歩いても歩いても景色は変わらない。
後ろを振り返れば、かろうじて足跡だけが残っている。
しかしその足跡を消し去るように、上から静かに雪が降り積もる。
積み重ねてきたはずの軌跡は、すぐに消えていきそうだった。
それでも僕は、前に進むしかなかった。
いつかこの努力が報われると信じて。
受験生だった頃の気持ちを思い出しながら書いてみました。
報われるかどうかなんてわからない。
それが「努力」なんだと思います。
でも、その努力はきっとどこかで自分を支えてくれる。
そんな気がしています。
もし歩きづらくなったら、一度だけ立ち止まって、
「自分はどこへ向かっていたんだっけ。」とそっと考えてみるのもいいのかもしれません。
それだけで、また少し前を向ける気がします。
「雪原の先へ」