幼稚園から高校まで、腐れ縁のあいつ。
何かにつけて私にイタズラを仕掛けてくるし、デリカシーの欠片もない発言もよくしてくる。
家も隣だし、一体いつまでこんな男と付き合わなきゃいけないんだ。
ある日、今まで皆勤賞だったあいつが欠席した。
変なことを言ってくるやつがいなくてせいせいする…はずなのに、なんだか物足りない。
いつもはあんなにウザイのに、いないと少し寂しいなんて変。
そんなわけないのに。
好きじゃないのに。
好きじゃないはずだったのに…!
─それでは、今日の天気です。
今日も全国的に大気が不安定で、午後からはところにより雨が降るでしょう。
「雨が降るって言ってるわよ、傘持った?」
「もう持ってるよ」
「連日あまり天気が良くなくて嫌ね」
「…行ってきます」
確かにほとんどの人は天気が悪ければ気分は下がるだろうが、私はそうでも無い。
私の大切な友達は、家を出る時雨が降っていなければ、傘を持ってこないから。
私の傘は特別大きくないから、二人で入ればいつもより君が近くに感じる。
いつもより近くで笑う君を見られるだけで、私の心は快晴なんだ。
私には、友達と言えるような友達がほとんどいなかった。私は、皆と同じじゃないと気づいていたし、多分、皆も私のことは「変わり者」だと思っていただろう。
ただ一人、君を除いて。
君だけは、私が皆と同じじゃないのを気にせず話しかけてくれたし、何より傍にいるだけで心が温まるような、そんな気分になった。
その明るさと温かさで私を照らしてくれた。
そんな君が、何よりも大切な存在。
私には分からなかった。終業式、いつもなら
「またね」
と手を振る君が、今日は
「じゃあね」
と手を振らないで帰った理由が。
四月の初め、始業式。
君は学校に来なかった。
なんであの時気づかなかったのか。
私って本当に「バカみたい」
夕日が沈んでいくのを、橙に染まる校舎の中から二人で見ていた。
空は頂点から少しづつ紺青に染まっていく。
「今朝遅刻しそうになっちゃったよ、忙しくて寝る時間全然ないし」
「先生宿題出しすぎでしょ、今日も徹夜だよ」
二人も橙に染まっていく。
このまま二人ぼっちでいたい。