多重人格

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7/2/2022, 2:35:48 PM

【日差し】

何かに、誰かに、“起こされる”のが嫌いだ。
まるで現実という名の地獄に引き戻されるような甲高い目覚まし時計の音、もしくは母親の「いい加減起きなさい」というあの声。
あるいは、真夏の夜に耳の周りを「プーン」と飛び回る蚊。ミンミン蝉やカラスの鳴き声もしかり。
とにかく起こされることが嫌いで仕方がない。

どんな時も叶うのなら、自由に、起きたい。
時間軸に振り回されずに日々を過ごしたい。
そんなことが許されるのなら。

ただ、ひとつだけ起こされることが幸せに代わる瞬間がある。
眩しくてしょうがない太陽の日差しを受けた時だ。
これからはじまる一日はとても明るい未来のイチブだと不思議と確信できるから。

どんなに疲れてても、どんなに急いでいても、日差しの下で「アッチー」なんて呟いて、
煙草を咥えてゆっくりと煙を吸い、吐き戻すひとときがこの上なく幸せだ。
その時、決まって上を向いているから。
自然と脳内で未来のことを考えているから。

普段は飲まないカフェラテや普段は食べないピザなんかも日差しの下では、日常を幸福にするツールと化す。

おかしいもので、誰にも弱みを見せられずとも、何故かブレずに輝きを放ち続けてくれる日差しには無条件にすがることができる。
日差しの下では強がらず素直になれる。
そして自分自身が密かにもつ黒い物体もしくは気体を静かに仕舞うことができる。
故に忘れた頃にまた溢れ出てくるのだろうけど。
だからこそ毎日変わらず、起きることさえ叶えばすぐそこにある日差しの魅力に気が付くのだろう。

日差しとは、太陽が、地球が、宇宙が、提供している最大のチャージスポットである。
いつもありがとう。

なんて思うことに対し、小っ恥ずかしい気持ちが存在するのも事実なもので、こんな風に考えながら日差しに当たる人間が動物が植物が存在したって、いいじゃないの、と実際は肯定する側の意見と見せかけて過ごすのもまた私。