「放課後、残って勉強会しない?」
多分、少し声が震えてたかもしれない。だって、君と話すだけで莫大の勇気を用意しなきゃいけないんだよ。この日のために用意した勇気は、この一言で使い切ってしまったというのに。放課後、委員会の仕事が入ってしまったことを昼休みに知った。
「ごめん、やっぱり勉強会は無しで」と申し訳なさそうに伝えた。私にはもう勇気は持ち合わせていなかったから。なんであそこで使い切ってしまったんだう、と自分を責める。
もう勇気があれば、「教室で待っててほしい」と君に伝えられたのに。
後悔ばかりが追いかけて、放課後。やけになった私は手早く仕事を終わらせた。もう帰ろう。そう思って、鞄を取りに教室のドアを開けた。
「えっ?」
思わず声が出た。窓際の机に伏せている、君の頭。なんでここにいるの?帰ってなかったの?起こさないように近づいて前の席に座った。午後の陽の光が髪に当たって綺麗。そう眺めていると、ゆっくりと動き出した。
「…あれ?委員会、もう終わったの?」
「う、うん。終わった、けど…」
「なんで、ここに、?」
「なんでって…勉強会するんだろ?」
「…待っててくれたの?」
「そうだけど?」と首を傾げた。まるで、最初から待つつもりだったと言っているかのように。すごく嬉しかった。
君の、そういう優しさが大好きなんだ。「ありがとう」を伝える勇気、まだ残ってるかな。いや、残ってなくたって伝えなきゃ。
「…ありがとうっ、」
「いいえー、ほら、始めようぜ!」
夢だったんだ。君と私しかいない教室で、二人っきりで過ごす放課後。でも私にはもう一つ夢がある。それは、君と恋人になること。私より仲良い子や可愛い子はたくさんいるから、自信なんてない。でも、いつか必ず伝えたいんだ。
この気持ちが溢れる前に────。
TITLE_「溢れる気持ち」