「まだ暑いねぇ。
お父さんの子供の頃は、
こんなに暑くなかったんだよ。
窓を開ければ涼しかったし、
夜はクーラーもつけてなかったんだ。」
「それっていつ?
原始時代?」
『最近、原始時代を知った子供との会話より』
私は今、人1人分の日陰にいる。
それを作り出しているのは、
交差点の歩道に生える細い電柱だ。
歩車分離式で、
少し待ち時間の長い信号。
焼けたアスファルトから立ち上る熱気。
信号待ちの車に反射する陽光。
容赦なく照りつける太陽が、
殺人的とも言える熱量で襲いかかってきている。
この細い電柱は、
自身の片側を陽に焼かれながら、
それらから身を挺して私を守ってくれている。
しかし、私は行かねばならない。
守られてばかりでは、前に進めないのだ。
短い間だったけど、
ありがとう、電柱。
鳥のさえずりを合図に、
私は電柱の影から1歩踏み出し、
灼熱の太陽の下にその身を晒しながら、
今日も職場に向うのだった。
そういえばさぁ
この前、友達と旅行に行ったんだけど
その子、すげー車酔いするタイプで
あ、新幹線で広島まで行ったんだけどね
え、あー
そこから更に別の友達と合流して
その子の車で四国行こーってなってて…
そうそう、
香川でうどん食べてみたかったし
あと、道後温泉?も入ってみたかったんだよね
でかい橋も渡ってみたかったし!
いや、宿は温泉じゃなくて
その広島で合流した子の家に泊まったんだけど
そそ、
高校時代の友達でさー
彼氏追っかけて広島まで行っちゃったの
ね、すごいよね
1番よく遊ぶ子だったから
ちょっと寂しかったんだけどさー
そー、たまにこーやって遊んでくれるからさ
ありがたいよねーそういう友達って…
ああ、もう1人も高校時代からの友達だよー
うん、あ、そう、でね、
何が言いかったかっていうと、
車酔い酷い人ってさ
新幹線でも飛行機でも酔うみたいで
うん、新幹線一緒に乗った友達
旅行に行く時毎回移動で
しんどそうにしてて
そう、薬飲んでも
毎回車内で真っ青になっちゃって、
なんか旅路を快適に過ごせる方法ないかな?
って
あ、そもそも
君、乗り物酔い酷いタイプ?
※職場の同期との会話より、同期の語り部分のみ抜粋 (空行に相槌を入れながら読むと、楽しいかもしれません)
忍者は、
毎日成長する植物を飛び越えることで、
ジャンプ力を鍛えたという話を父から聞いた。
子供の頃の私はその話に感化され、
母がプランターに植えたローズマリーを
毎日飛び越えた。
だが、
ローズマリーも私のジャンプ力も
それほど早くも高くも成長せず、
飽きてしまった。
大人になって、
忍者が利用した植物は麻だという話を聞いた。
…そりゃ、
すくすく上に伸びる植物でなきゃ意味ないな。
子供達にもその話をしてみようか。
私より高く、飛べるように。
憧れだったものが
僕の首を絞める
縋るたびに傷付いて
求めるたびに焦って
何にもなれなかった僕を責めないで
希望を壊して慰めて
純粋に想わせて
子供のように