三日月は欠けてなんかいないわよ。
地球が隠してるだけ。
なんで?
さあ、なんででしょうね。
、、、
月だって、あまり光ると疲れちゃうのよ。
ほら、蛍だってそうじゃない?
影がないと、休めないのよ。
あなたは月の影に何を映しているの?
彼女はそう言って、煙草の煙を吐いた。
唇から零れた煙は、月へと上っていった。
冬晴れといえば、絶対に吹雪だ。
広大な青空と光り輝く雪を浮かべたくなる。
でも絶対に、冬晴れは吹雪だ。
だって、冬が生き生きしてる感じがするじゃない?
晴れた日の冬は、冬の外にいる気がする。
吹雪は、冬の中にいる。
晴れも吹雪も天気だけど、つまりは気の持ちようだよ。
晴々とした吹雪を感じよう。
そこに天気がある。
偶然だった。
出張先のホテルで、元カノと再会した。
実に、四年ぶりのことだった。
お互い、挨拶だけで済ませるつもりだった。
けれど、顔を合わせて話しているうちに、懐かしさがこみ上げてきて、気づけば近くの居酒屋に入っていた。
別れ方は、悪いものではなかった。
それでもふと、「なぜ、別れたんだっけ」と思ってしまうほどに、彼女は魅力的に見えた。
当時の僕には、それが見えていなかったのだろうか。
「惜しい気もするけど、別れたことに後悔はないよ」
二杯目のビールを飲みながら、花火大会のあとみたいな顔で、彼女はそう言った。
その晩、夢を見た。
彼女が、僕のホテルの部屋にやってきた。
驚いてドアを開けたが、彼女は何も話さなかった。
けれど、その顔は、言葉以上に雄弁だった。
僕は言葉にならない感覚で、彼女の気持ちを理解した。
彼女は、目を閉じていた。
僕は、なぜか部屋に置かれていた口紅を手に取った。
それは、彼女が昔よく使っていた色だった。
僕は、そっと彼女の唇に紅を塗った。
そして、彼女は何も言わず、部屋を出ていった。
記憶に、紅色だけを残して。
夢の断片に映る自分は
どこか汚れてて
どこか醜い
ただ、どうしようもなく惹かれてしまう
夢の自分に問いかけてみる
「あなたは誰?」
夢の自分は答える
「そもそも、私って何?」
心の迷路に迷い込んだとき
近道や抜け道を探してはいけない
迷路の暗闇に目を慣らし、目印をつけ
1つ1つ丁寧に、進んでいくことが大切だ
そうすれば、そこはもう迷路ではなくなる