喪失感に侵されて
言葉も涙も出てこなくなった

周りから放たれる言葉の矢に
痛みも感じないほどには
自我が失われていた

“何故いつも後悔する前に気づけないのか”

そんな問いが脳内に響く

嗚呼何もできなかった自分を
呪ってしまいそうだ

世界に一つだけのこの気持ちに
名前をつけるとしたら
なんてつけようか

常に熱く燃えているけれど
たった一言で
焦燥感や劣等感に苛まれるときもあれば
幸福感や優越感に転がるときもある
この気持ちを何と呼べばいいのだろうか

私には分からないから
まだもう少しだけこのままでいさせて

後ろから不意に抱き締められて
高鳴った胸の鼓動が
聞こえてしまわないかと思った途端
より一層加速する心拍

“ドキドキしてるね”

その問いには答えられず
りんごのような顔を俯かせることしか
私にはできなかった

軽やかに踊るように笑った顔は
どこか幸せそうだった

そんな瞬間に何度だって戻りたい

何もかも幸せだったあの瞬間に

時を告げる鐘が鳴ってしまったら
手遅れになるから
その前に逃げなくてはいけない

王子様の前で
みすぼらしい姿なんて
到底見せられないから

王子様の前では
美しい姿でありたいのは
女心の基本でしょう