87号

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9/19/2025, 12:28:34 PM

秋色

青みが引いて葉が錆びて、育ち盛りの稲穂が光る。
愛を伝える音が響き、夜空に浮かぶ瞳も火照る。
空飛ぶ雀も、風に吹かれる落ち葉のよう。
秋に終わる命もあるが、秋に始まる命もある。
たぶん秋ってそんな色。

9/17/2025, 12:20:04 PM

靴紐

結ぶ、でも解ける。
結び直す、でも解ける。
私が歩むのを止めない限り終わらない行為。
それでも結ぶ。
私がまだ歩いてるから。
今の中のちょっと先の未来のために
ずっとは続かないけど
解けてしまったら意味の無いことだけど
それでも結ぶ。

7/27/2025, 12:33:34 PM

オアシス

永遠にオアシスを求め続ける。

ある時は砂漠。
湿気った土は無い。
サラサラに乾いた砂が緩やかに積もり
変わらないその光景が
オアシスを求める欲求を増長する。

ある時は熱帯雨林。
あらゆる生命の楽園。
植物に断られることはない。
訪れた者は、ここが
オアシスかと皆が思うだろう。
しかし、あまりにも生命が多く
返ってそれぞれに危険が伴う。
互いの欲求が武器になる。

ある時は街。
そこには高知能の有機生命体が集まる。
平穏でも刺激でもなんでも揃う。
しかし、そこでは
弱者は欲求を抱いてはいけない。
強者に淘汰されるから。
弱者から純粋な欲求はなくなり
濁り澱んだ欲求のみが残り
弱者は強者となる。

砂漠。
乾いた砂が続く。
遠くの蜃気楼がまるで水のようで
届かない幸せが待ち遠しい。

たどり着いたオアシスが
濁りのないものであることを期待するが
これらの欲を抱えた自分が
オアシスにたどり着いてしまったなら
そこはもう自分を含む誰のオアシスでも
なくなってしまうのではないかと
少しだけ頭によぎり
そんな戯言はほんの少しで欲が消した。

7/26/2025, 11:32:16 AM

涙の跡

激動。

ムチン層だけでは
雑味な涙を瞳に留まらせることはできない。
これまで溜めてきた流動体は
グラスに留まることすら耐えられなかった。

誰の許可も得ず
このグラスから出ることも留まることも
自らの権利だと主張する
グラスは抑圧とし
私の理性という秩序からの解放という
理念を掲げたものたち。

しかし、その反面にやつらは
私の心の解放者でもある。

やつらの横暴さに為すすべなく
グラスは傾き
やつらは頬伝う涙として
涙跡という開拓の道を残し
規律重んじるグラスへと
戻ることしかできなかった。

やつらが道から乾いても
不必要な存在感を残すだけ。
解放者たちは私の心に出口をつくるだけで
帰っては来ず、それを塞ぐこともせず。

事の末には憔悴した秩序が
やつらが散らかした道を
名の通りにするだけである。

7/25/2025, 10:46:05 AM

半袖

臆病者は半袖を着れない。
計画の露見。
降り積もる罪。
己のコンプレックス。
隠したい過去。
外部からの攻撃。
自分を守るための長い袖。

抱え過ぎた慎重さから
肌を晒すことは己を晒すこと
と、意識の最も深い場所で
無意識に認知している。
もし、臆病者が半袖を着ているならば
それは、臆病者にとって大きな成長。
もしくは、全てを諦めた末路かもしれない。

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