[※grbl二次創作/成代/twst× grbl:2]
禍々しい緑の輝き。
手足に巻き付く無数の茨。
首に這わされた生白い指。
『何故拒む? 別離など、永遠に来ない方がいいだろう?』
艶やかな低い声。
傲慢で、他人の地雷を平気で踏み抜く『妖精の王子様』。
"オレ"にとってその存在は嫌悪を抱いてしまうものであった。
他の妖精族や半妖精には普通でいられるのに、その男だけはどうしても関わり合いになりたいと思えないのだ。
寧ろ『近くに来てくれるな』と疎ましく思うことの方が多かった。
────『まだ未熟だから多めに見てくれ』?
人間よりも遥かに長く生きているくせに、未だに人間が何を厭うのか理解していらっしゃらないんですか?
癇癪を起こして天候に影響を及ぼす男を見かけるたびに、いつも腹ではそう思っている。
『終わるよりも、永遠にこの時が続けばいいじゃないか。……なぁ、どうして首を縦に振ってくれないんだ────"ロベリア"』
箍の外れた駄々っ子の指が力一杯食い込む。
ミシミシと骨が軋み、視界は明滅し、口はひゅうひゅうと耳障りな音を吐き出すばかり。
この男はきっと、自分が何をしているかすら分かっていないのだ。
一見すると穏やかな表情で歓談しているように見えることだろう。────人間の首を絞めているというのに。
『■■■■……■■■■、何故返事をしない? 眠るには些か早いぞ?』
その男──『マレウス・ドラコニア』は首が折れて脱力した同級生の亡き骸を腕に抱き、まるでプロムで踊っているかのように揺らした。
※ ※ ※
酷い夢を見た。
目覚めは酷いもので、汗で張り付く寝衣が気持ち悪い。
ゼェゼェと息を荒げながら、早鐘を撞くような胸を押さえつつ洗面所へ向かうと、鏡を見て思い切り顔を顰めた。
映っていたのは首を一周する青紫色に変色した手形と、両手首に絡み付くように残った茨の痣。
「オーララ……君も執拗いね。来世にまで付き纏って来ないでくれよ、碌に眠れやしない」
────これだから妖精の『祝福』とか言う"呪い"は嫌いなんだよ。
【逃れられない呪縛】2023.05.24
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いやあの、別に彼のことが嫌いって訳ではないです、本当に。
ただ『ん?』って思った部分がチラッとあったり無かったり……()
あと詳しく言いませんが7章……(震え声)
[※grbl二次創作/成代/twst× grbl]
パチン、と指を弾く。
軽快な音とは裏腹に、遠く離れた場所から破壊音が鳴り響いた。
建物が崩れ瓦礫と化し、苦痛と恐怖で叫ぶ醜いならず者共の断末魔。
赤黒い雨が辺りに降り注ぎ、鉄の臭いを漂わせる。
スッと胸が軽くなった気がした。
別に自分は何かを壊す音を『幸福』と捉えている訳ではないけれど、人攫いと臓器売買を繰り返す醜悪な連中を潰したことで仄暗い爽快感を覚えたのは確かだった。
これは決して善行などではない。
そもそも人の命を摘み取っている時点で自分は罪人と大差無い。
ただ目先で降りかかる理不尽が不快で、善人を喰い物にする存在を許せなかっただけであり、全てが身勝手な自己満足でしかない。
──何せ自分は、どうしようもないことに『ヴィラン』としてしか振る舞えないのだ。
この行為を容認しろとも、許せとも言わない。
いずれ"オレ"は全ての罰を受けよう。
だから、いずれ出会う見知らぬ貴方。
どうか必ず、この命を終わらせておくれ。
※ ※ ※
子供の頃、家族で砂浜を歩いていた時に巻き貝を踏み砕いてしまったことがある。
その音がやけに大きく聞こえて、当時の自分は思わず身を竦めた。
すぐに聞こえた両親の心配そうな声で何とか肩の力が抜けたものの、心臓は鼓動を早めたままだった。
今思えば、それは予兆だったのかもしれない。
両親に答えようと振り返った瞬間、何かが破裂したような音が響き、鉄と洋墨が混ざったような異臭がした。
最初に目に入ったのは呆然とした様子の母だった。
何かの飛沫を被ったのか顔や服は赤く染まっていて、視線は一点に固定されていた。
その視線を辿った先に父の姿は無く、居たのは────インク瓶を模した頭部を持つ化け物だった。
『──ぁ、』
思考が停止した。
漠然と『あの化け物に父が殺されたのだ』と認識はしたものの、『何故?』という問いが頭を占めていた。
何故父は死んだ?
何故アレはここに居る?
何故、何故、何故、何故────。
そこまで考えて、母の絶叫と何かを砕く音が耳に届いた。
母は四肢を末端から潰されていた。
"オレ"の、目の前で、化け物が振り下ろす鶴嘴で、足で、丁寧に、均一に、ぐちゃぐちゃ、に──────。
『にげ、な……さ、ぃ……ろ、べり、ぁ』
それから先は、覚えていない。
辺りに広がるインクが混ざった血溜まりと、無数に散らばるガラス片から、自分はあの化け物を殺したのだろう。
あの日から、自分の周りでは不幸が起きる。
死に希望を見出す者。
先に逝った最愛の後を追う者。
────インク瓶頭の化け物に突然変異し、自我を失い、多くの人を手にかけた者。
言葉を尽くしても死を救いとする子供は意志を曲げることは無かった。全てを忘れてしまう前に最愛の人の許へ逝きたいという老人も同様に。
──だからせめて、苦しむことなく眠れるよう即効性の毒を用意して、その最期を見送った。
自我を無くした彼等を皆殺しにした。
──化け物としてではなく、人間として終わらせてやるべきだと思ったから、手加減は一切しなかった。
一般人を喰い物にする者共を潰して来た。
──他人の幸福を貪り悦に浸るその態度に虫唾が走ったから。
全て、壊して来た。
忘れないように、彼等の声を、音を、"クラポティ"へ録音する。
他人から見ればこれも悍ましいコレクションに見えるだろう。
けれどオレは、この行為を止める気は無い。
これは彼等が居たことを証明するための物だ。
明日を迎えることなく、彼岸へ渡った彼等が遺して逝ったものだからだ。
だからオレは、"オレを終わらせる者"が現れるまで、この行いを止めることは無いだろう。
────だって『ヴィラン』を倒すのは、いつだって『主人公/ヒーロー』だろう?
明日か、数ヶ月後か、数年後か────。
いつか"オレ"のもとへ訪れるであろう"見知らぬ貴方"。
出会ったのならどうか必ず、この命を終わらせておくれ。
【昨日へのさよなら、明日との出会い】2023.05.23
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いずれ支部の方に加筆修正して投げるかもしれない(予定は未定)