「やさしい嘘」
私の家の隣には、二つ歳が離れたお姉さんとその家族が住んでいた。
お姉さんは私を本当の妹のように可愛いがってくれていた。
お姉さんは、昔から頑張り屋さんで努力している姿は凄くかっこよかった。
お姉さんは「大丈夫だよ」が口癖だった。
私はお姉さんと同じ高校に進学した。
二人で一緒に学校に行き、一緒に帰る。
それだけで私たちは幸せだった。
でもある日、そんな幸せは崩れた。
お姉さんはいじめを苦に自殺しちゃった。
気づいてもなかったよ、
だって、少なくとも私の前では笑顔だった。
お姉さんは私にやさしい嘘を付いてたんだ。
なにが「大丈夫だよ」だ。
全然大丈夫なんかじゃないじゃん。
私は、私たちはもっと頼って欲しかったし、苦しみを分かち合えたかったし、まだまだ一緒がよかったよ。
「瞳を閉じて」
瞳を閉じたら真っ暗な世界が見える。
もし、死んだらずっとずーっと、この真っ暗な世界から出られないのかな。
死にたくないよ
「貴方への贈り物」
私の両親は厳しくて毎年、クリスマスプレゼントや誕生日プレゼントを貰えなかった。
周りの友達は皆んな、流行りのものだったり可愛いのを貰ってて羨ましかった。
別に、家庭が貧乏だった訳でも複雑なわけでもないの。
お母さんもお父さんも私たちのことを心から愛してくれてたし、大切にしてくれた。
でも両親が不慮の交通事故で亡くなったときに気づいた。
もうとっくの昔に大事なものは全て貰ってたんだなって。
もう両親に恩返しは出来ないから、代わりに大切な人に恩送りをしよう。贈り物をしよう。
「手のひらの宇宙」
生まれたての赤ちゃんの手を握った。
暖かくて柔らかくてふわふわしてるの。
きっとこの小さな手には、大きな希望と未来が詰まているんだ。
この子はね、小さな宇宙を持ってるんだ。
「透明な涙」
みんな涙には色がついてるの。
嬉しくて泣いてるあの子は淡いピンク色。
悲しくて泣いてるあの子は燻んだ水色。
悔しくて泣いてるあの子は燃え尽きた赤色。
じゃあ私の涙の色は?
別に嬉しい訳でもない、悲しい、悔しいわけでもない。
でも何故だか心が痛いの、涙が落ちるの。
私の涙には色がないから誰も泣いてることには気づかない。
泣いているうちに腫れていく目と濡れた手。
誰も私の心に手を差し伸ばしてはくれない。
わたしも色が欲しい。